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慌てて廊下に出て放置された机を確認すると、それは紛れもなく僕の机だった。ご丁寧なことに机の中身までなくなっている。胃に、拳で握りつぶされるような不快な痛みと気持ち悪さを感じた。それでも机を教室へと運んだ。机を元の位置まで戻し終わると、次は中身だ。
嫌な予感がして教室のゴミ箱を開けた。はずれて欲しかった予感は的中していた。ゴミ箱の中には僕のお道具箱一式が捨てられていた。
机だけならまだしもここまでするのは確実に悪意を持っている。
僕はゴミ箱からお道具箱を拾い出した。乱雑に捨てられたお道具箱からはセロハンテープや色鉛筆が飛び出していた。その一つひとつを拾ってお道具箱に戻していく。
犯人は誰だ。クラスでガキ大将を気取っているあの男子か。はたまた女王さま気分で偉そうに他の女子を侍らせているあの女子か。それとも──クラス全員か。
そこに恐怖はなかった。ただ、特別な人間である僕にただの凡人が歯向かったということに怒りが湧いただけだ。
「凡人のくせに生意気な」
呟くように言ったその言葉は、クラスの喧騒に消えていった。
その一件が起きてから僕へのいじめは毎日続いた。朝、教室に行くと僕の机にはイタズラがされていることが当たり前になっていた。天板には読むにも値しない低レベルの落書きが書き殴られ、机の中には紙くずが押し込められていた。
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