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石山とは中学を卒業するまでほとんど一緒に過ごした。石山と過ごした時間はとても楽しくて有意義だった。
残念だったのは高校が別々になってしまったことだ。
石山が合格したのは府内でも有数の公立進学校だった。僕もそこを目指したが箸にも棒にもかからなかった。悔しいが石山は僕より数倍頭が良かった。
結局、僕は仕方なしにランクを下げた高校に通うことになった。賢くなければ馬鹿でもない、人並み程度の高校だ。
そして迎えた卒業式。その日は校門近くに植えられた桜が綺麗に咲いていてまるで僕らの門出を祝福しているようだった。
式が終わってそれぞれが最後の思い出を残そうとカメラ片手に走り回っている。教室からその様子を眺めている石山に僕は声をかけた。
「石山、高校は無理だったけど大学で一緒になろう」
「ああ、だが俺の目指す大学はレベルが高いぞ? ちゃんとついて来いよ!」
「なんだ、高校の授業も始まってないのに言うじゃないか」
「これくらいの気概じゃないと厳しい受験戦争には勝てないのさ」
それから、いつでも連絡できるようにと買ってもらったばかりの携帯のアドレスを交換した。
「これからは頻繁に会えなくなるね……」
「そのかわり携帯で連絡しあえるだろ。そんなに悲しそうにするな。離れてたって俺はずっとお前の友達だ」
石山は小指を立てた手を出した。
「約束だ」
「うん。約束」
僕は石山の小指に自分の小指を絡めて約束げんまんをした。
お互いの顔を見合った僕らはなんだかおかしくて笑いが込み上げてきた。
笑い合う僕らはきっと青春映画の一コマのように見えただろう。そしてこれがこの映画のラストカットだった。
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