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そして気づけばその大人になるまであと一ヶ月半だ。きっと誕生日を迎えて成人しても大して変わることはないだろう。僕は特別な人間ではなかったのだ。
そしてその絶望は七月のある日僕に一大決心をさせた。
その日、僕は大学に行く電車で酔っ払いの男に絡まれた。午前中から酒を飲んでいるやつなんてまともじゃない。ちょうど降りる駅だったし無視を決め込むことにした。
だが男はそれが気に食わなかったらしく、電車を降りようとする僕の腕を掴んで罵声を浴びせた。
それでも無視を続けると男は僕の胸ぐら掴んでさらに怒鳴りつけた。男の唾が顔に飛んで気持ち悪い。
カチンときた僕は男の顔を睨んだ。酔いのせいか、それとも怒りからか男は顔を真っ赤にしていた。左頬のあたりにある紫色に変色した痣だけが暗さを放ち異様に目立っている。
男はしばらくの間、僕を罵ると気が済んだのかどこかへ行ってしまった。
意味がわからない。僕がいったい何をしたと言うんだ。ただでさえ足取りが重い通学だ。それなのにどうしてこんな目に遭わなければならないんだ!
顔に飛んだ唾をハンカチで拭った。でもやっぱり気持ち悪い。駅のトイレで顔を洗おう。
そう考えた時、電車が動いていることに気がついた。慌てて外を見ると降りる駅が遠ざかっていく。
大学に着いてもまだ腹の虫が収まらかった。
乗っていた電車が特急だったこともあって大幅な遅刻だ。
自慢じゃないが入学して今まで無遅刻無欠席だ。それがあんな酔っ払いのせいで記録が途絶えたというのは非常に腹立たしい。
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