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「おじい様は姫をどうするつもりなのであろうな」
「世に放てば人の世に混乱をもたらし、手にかければ冬十郎様まで失ってしまう。そうなればただ、あれは恐ろしい魔物として鎖につないで封じておくしかないのではないでしょうか」
手に持った首輪を見下ろす。
「それで、これか……」
私はゆっくりと首を振った。
抱きしめた時の姫の優しい体温や柔らかい感触、甘えて私を呼ぶ可愛らしい声を思い浮かべる。あの子に拘束具など似合わない。
私はその場の全員に聞こえるように少し声を大きくした。
「姫に鎖が必要なら、私が見えない鎖になろう」
「ご当代様」
「これから先、姫の見るもの、触れるもの、考えることまで、全部私が管理していく。姫は一生籠の鳥だ。どこへ行くにも何をするにも一挙手一投足のすべてを私の監視下に置く。こんな下品な首輪はつけぬが、見えない鎖で両手両足つないでおくのだ。姫には生涯、ひとかけらの自由も与えぬ」
これでは姫を塔に閉じ込める悪い魔女そのものだな……。
皮肉すぎて、口元が歪む。
だが、今の言葉が本心だった。
これまで、姫の望みを叶えたい、欲しいものを与えたいと、薄っぺらな優しさを口にしてきたのに、心の底には独占欲と執着しかない。
だがもう、躊躇いは無い。
いつか姫に憎まれることになっても、私の見えない檻の中から出してはやらない。
「それで、文句はあるまい」
三輪山は怯えたように、七瀬は悲しそうに、ほかの者は途惑いの目で私を見上げていた。
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