38 嫉妬

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 表情には出さないようにしたが、耳が熱くなってきたので、私の感情は恭介に気付かれたようだった。  くっくっと喉の奥で笑っている。 「恭介、何を笑っている」 「いや、あんたが乙女みたいな反応するのが悪い」 「誰が乙女だ」 「あー、まぁ、とりあえず場所を移そう。ちらほら野次馬も集まり始めているようだしな。その女が目を覚ましたら、問い質したいことはたっぷりあるんだ」 「話を聞くのは二、三日後でもよかろう。まずは連れ帰って休ませたい」 「はぁ? ずいぶんと過保護なことを。二十人以上も意識不明にした恐ろしい女だということを忘れていないか」 「どんな力を持っていようと、姫の体は人間と同じでひどくもろい。首輪をはめられ、食事も与えられず、ほとんど寝てもいないというのに、無事なわけがなかろうが」  恭介は息を吐きながらガリガリと頭をかいた。 「はぁ……。分かった。連れ帰るのは仕方がないが俺もそちらに行くぞ」 「だが」 「いくら虚弱でも、起きれば話くらいはできるだろ」  わざとらしく「よっこらしょ」と声を出して立ち上がり、恭介は「撤収するぞー」と叫びながら、車のある方へ鬼たちを伴って歩き出した。
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