07 ただ一人

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 周りが少し、ざわざわし始めている。  野次馬はまだ少ないが、誰かが通報したのだろう。  遠くにサイレンの音がする。 「ご当代様!」  2号と3号が一緒に駆け寄ってくるのが見えた。 「これは」  と、倒れている二人を見て2号が絶句している。 「何があったのですか」  3号が冷静に聞く。  冬十郎がわたしに目線を寄越した。 「また、誘拐されかけた」 「ええ? またですか?」  2号が大げさに驚く。 「さっきの誘拐からまだ二時間も経っていないのに?」 「ああ。だが事実だ。佐藤はマンションから無断でこの子を連れ出そうとしたし、この男は佐藤を殴ってこの子を連れ去ろうとした」 「佐藤さんが……。経歴も為人(ひととなり)もきちんと調べたのですが……申し訳ございません」  3号が頭を下げ、2号は困惑したような顔でわたしの方を見た。 「こんなに次から次へと……何か、この子おかしくないですか?」 「その話は後にしましょう。冬十郎様、いかがいたしますか」  わたしを抱く冬十郎の手の力が少し強まる。 「そうだな。この場には、私もこの子もいなかった。佐藤が一人で歩いているところを、この男がいきなり殴り掛かった、ようだな」 「かしこまりました。警察へはそのように」 「ごねるようなら、上層部の話の分かる輩にわたしから……」 「いえ、万事心得ておりますので」 「では、頼む」  3号と2号が恭しく頭を下げ、冬十郎はわたしを抱いたまま、当然のようにその場を後にした。
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