02 呼ばれる

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「どうした、頭痛か」 「いや……」 「まぁ、あんたが病に罹るわけがないか」 「うむ、先程から妙な感じがしてな」 「妙とは」 「何というか……何かに呼ばれているような」 「ほう、そいつはあんたを冬十郎と呼ぶのか、それとも冬九朗か」 「いや、名を呼ばれるのとは違う。テレパシーのように声が聞こえるわけではないのだ。うまく言えぬが、こう、気持ちが引っ張られる感じだ。あっちの方から」  と、指さす方には火葬場がある。  恭介が嫌そうな顔をする。 「誰が呼ぶのだ。身代わりにされた男か」 「いや、別に私が殺したわけでなし……。身元不明の遺体を供養してやっただけだ。ついでに利用させてもらったわけだが……」  二人、顔を見合わせて苦笑いする。 「それに、火葬場を通り越して、もっとずっと遠くから呼ばれている気がするのだ。恭介、お前は私より顔が広いだろう。そういう力を持つ輩に心当たりはあるか」  恭介は顎を撫で、少し考えたようだが、すぐに首を振った。 「無いな。思念を飛ばすとなると、精神に干渉するような力なんだろうが……。そんな力は最近じゃ珍しいからな」 「そうか」  私も恭介も人間ではない。  だが、平安の昔から人間とはうまく共存してきた。  私の一族は単に年を取らないだけ、恭介のところはやたら力が強いだけで、もともと平和的で穏やかな種族だ。 「冬九……じゃなかった、冬十郎、分からないものは放っておけ。迂闊に近寄らない方が良いぞ」 「……ふむ、そうだな」  恭介の意見には全面的に同意する。  同意するが……。  どのような者が私を呼ぶのだろう。  そしてなぜ、私を呼ぶのだろう。  私はもう一度、その方角を振り返った。
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