17 炎

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「火が! 燃える! 燃える! あああああ!」  男の体が崩れ落ちる。  服は焼けていないのに、その全身に火ぶくれが広がっていく。 「やめろ、やめてくれ!」 「やめる? どうして? あなた、冬十郎様に何をしたの? そのナイフで何をしたの?」 「あああああ!」  男がまだギャーギャー叫びながらのたうち回る。  わたしは目に力を込めたまま、叫ぶ男を見下ろした。  ああ、うるさい。  声も出ないようにしてやろうか。 「姫……!」  冬十郎が苦しそうにわたしを呼んだ。 「もう、いい……。これ以上は……」  冬十郎が這うように近づいてくる。  苦し気に手を伸ばしてくるから、わたしはその場に跪いた。 「冬十郎様、すぐに終わります」 「だめ、だ……」  冬十郎の手がわたしの顔を両手で包んだ。  長い指が血を拭うようにわたしの頬を撫でる。 「姫、殺しちゃいけない……」 「どうしてですか、あの男は冬十郎様を」  冬十郎が首を振る。 「あの、時……」  冬十郎のきれいな顔が血で汚れていて、つらそうに眉根を寄せている。
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