19 恭介

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「おい、冬十郎、レジストしろ」 「れじすと……?」 「幻術への抵抗だ。俺にレジスト出来るものを、あんたが出来ないわけがないだろうが」  姫の精神干渉を跳ね返せということか。  やろうと思えば、多分、できる。  だが。 「……れじすと、したくはない……」 「はぁ? さっきからあんたの言動は、まったく意味不明だな」  この糸が姫の私に対する執着ならば、無理に引き剥がすことは拒絶を意味する。  力尽くで拒絶すれば、姫をいっそう不安にさせるだけだ。 「姫…………ひ、め……」  苦しい息の下、必死で呼びかけると、姫が顔を上げた。  そして、糸に縛られた私を見てぎょっとしたように目を見開く。  とたんにパシッとすべての糸が霧散した。  急に息が吸えるようになって、私は軽く咳き込む。  残滓のようなものがキラキラと周囲に舞う中、姫が両手で自分の口を押えた。 「わたし、今、何を……?」 「何でもない。姫、何でもない……」  姫を抱き寄せ、頭を優しくポンポンと叩く。  呆然としたようにこちらを見ている恭介に片手を振って見せる。 「恭介、話は後にしよう。私は、疲れてしまった……」 「呆れ果てた男だな」 「心配してくれたのは分かっている、だが……」 「もうよい。共感はできぬが、理解はした。あんたは自分から望んで危険な女に手を出したのだな」 「ああ……」  手を出したという表現は正しいとは言えぬが。 「私の意志で、この子を保護した。手放す気は無い」
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