19 恭介

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 恭介はふうっと息を吐いて、握った右手のこぶしを開いて見せた。  手のひらが赤く焼け爛れている。 「それは……?」 「さっきの火の幻覚だ。完全にはレジストできなかった」 「すまない……」  頭を下げると恭介は首を振った。 「あんたに謝ってほしいわけじゃない。これがどれほど危険な力か、知っておいた方がいいと思うだけだ。成長すれば、さらに力は強くなるぞ。制御できない脅威とみなされれば、鬼童としては放置できなくなる」 「そこまで危険視しなくても……」 「鬼の頭領に火傷を負わせ、蛇の頭領を骨抜きにする。その事実だけで相当にヤバイ代物だと判断されるさ」  私は姫を抱いている腕に力を込めた。 「姫については私がすべての責任を負う。ずっと私がそばにいる。最後まで」  姫の手が背中に回され、強く抱き返してくる。  それだけで、胸の内に喜びが沸き上がる。 「……大丈夫、安心しなさい」  柔らかくて、温かくて、ただただ愛しい存在。  巻きついてくる執着の糸を、少しも恐ろしいとは思わなかった。  むしろ、自分に向けられる強い想いに私はどこか喜んでいた。 「姫……」  少し傷んでいる髪の毛を丁寧に優しく撫でる。 「あんたのそんな顔は初めて見るな」  瞬きして恭介が言った。 「どんな顔だ?」 「うーん、少々だらしない顔だな」 「は?」  恭介の口から苦笑が漏れる。 「まぁ、いずれあんたの手に負えなくなったら、その化け物はいつでも鬼童で預かるよ」  姫が身じろぎして、体の向きを変えた。  私からはよく見えないが、多分、恭介を睨んでいる。  私の目にはずっと儚げで不憫なかわいそうな子と映っていたが、もしかしたら内面は意外に気が強い子なのかもしれない。  恭介が降参というように両手を軽く上げた。
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