20 深紅の薔薇の森

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 わたしはまだ寝ぼけているふりをして、体をずらして冬十郎の膝に頭を乗せた。  冬十郎は動かせる左腕でわたしの体を撫でる。 「まだ眠いのか」  冬十郎は、こんなことをされているのに怒っていない。 「んー……」  わたしはその優しさに付け込んで甘える。  冬十郎の体がじんわりと温かい。  撫でてくれる手も優しく温かい。  わたしの心を映すように、薔薇の蕾がいくつもいくつも開いていく。  部屋を埋め尽くす薔薇の森。  すべて開くと数百本、いや数千本だろうか……圧巻の光景が広がっていく。  冬十郎が感嘆するように息を吐いた。 「美しいな……」  日に日に、自分の力が強くなるのを感じている。  理由は分かっている。  わたしは、自分をさらおうとするピアスの男を炎の幻覚で退けた。  あの日、あの瞬間に、わたしは自分が無力ではないことを知った。  強い力さえあれば、自分で自分の居場所を選べることを知った。  だから、望んだ。  もっと、力が欲しい。  もっと、強くなりたい。  邪魔するものをすべて、排除できるくらいにと。  あれ以来、毎日、意識的に力を使うようにしている。  半径2mくらいまでしか届かなかったものが、部屋いっぱいまで広げられるようになっている。  ただ、あまり安定はしていない。  わたしの力は、その時々の感情に、強く左右されてしまうから。
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