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「それが、ご当代様だったらどうですか」
「え?」
「ご当代様がお嬢様を押し倒して、スカートの中に手を入れてきたら、どう思われますか」
「え……?」
冬十郎があのキンパツ男みたいに乱暴なことをする?
絶対にそれはあり得ないと思った。
優しい冬十郎がひどいことをするはずがない。
「あの、冬十郎様は絶対に乱暴なことはしないし、全く想像がつかないです」
「そうですか……。では、たとえば……」
七瀬は、少し瞳を揺らした。
「たとえば、ご当代様がお嬢様を裸にして、体を撫でてきたらどうですか」
意味の分からない質問だけど、真面目に聞いてくるので想像してみた。
冬十郎が、わたしの裸を撫でる。
あの時、血を洗い流すために服を脱がせてくれたし、シャワーでお湯をかけながら撫でてくれたけれど、それとは違うんだろうか。
冬十郎に髪を撫でられたり、背中を撫でられたりするのは、いつもとても気持ちがいい。
裸で体を撫でられるのだって、きっと。
「えっと、とても、気持ちがよさそうな気がします」
にっこり笑うと、七瀬がパチパチと瞬きをした。
「そう、ですか」
「はい」
七瀬はちょっと目を閉じて、指で眉間をつまんだ。
わたしはケーキにフォークを入れて、食べ始めた。
甘くて柔らかくておいしいケーキだ。
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