21 男

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「それが、ご当代様だったらどうですか」 「え?」 「ご当代様がお嬢様を押し倒して、スカートの中に手を入れてきたら、どう思われますか」 「え……?」  冬十郎があのキンパツ男みたいに乱暴なことをする?  絶対にそれはあり得ないと思った。  優しい冬十郎がひどいことをするはずがない。 「あの、冬十郎様は絶対に乱暴なことはしないし、全く想像がつかないです」 「そうですか……。では、たとえば……」  七瀬は、少し瞳を揺らした。 「たとえば、ご当代様がお嬢様を裸にして、体を撫でてきたらどうですか」  意味の分からない質問だけど、真面目に聞いてくるので想像してみた。  冬十郎が、わたしの裸を撫でる。  あの時、血を洗い流すために服を脱がせてくれたし、シャワーでお湯をかけながら撫でてくれたけれど、それとは違うんだろうか。  冬十郎に髪を撫でられたり、背中を撫でられたりするのは、いつもとても気持ちがいい。  裸で体を撫でられるのだって、きっと。 「えっと、とても、気持ちがよさそうな気がします」  にっこり笑うと、七瀬がパチパチと瞬きをした。 「そう、ですか」 「はい」  七瀬はちょっと目を閉じて、指で眉間をつまんだ。  わたしはケーキにフォークを入れて、食べ始めた。  甘くて柔らかくておいしいケーキだ。
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