23 悪い魔女

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「あの、王子様って、どんな……」  大きな両手がわたしの肩を強くつかんだ。 「いたっ」  びっくりして声を出すと、同じくらいびっくりしたように冬十郎が手を離した。  その両手を愕然と見下ろす冬十郎。 「私は……悪い魔女か」  顔をそらして低く呟く。  冬十郎が魔女? どういう意味だろう。 「冬十郎様?」 「すまない、少し喉が渇いた……」  低く言って、冬十郎はわたしを見ないようにベッドから降りていく。 「姫、今日は一人で寝なさい」  振り返らずにドアまで歩いていく。  黒髪が腰のあたりでさらさら揺れるのが見えた。  あの日から何か月も経ったわけではない。  わたしがここへ来てから、まだ一週間経っていない。  たったの数日だ。  肩甲骨の位置から腰の位置まで、ほんの数日で……。 「髪、伸びましたね」  ドアの前で冬十郎が足を止めた。 「一日に何センチ伸びるんですか」  冬十郎の指が自分の髪を一房ぎゅっとつかんだ。 「爪も毎朝、切っていますよね。一晩で尖るくらいに伸びるから」  ハッとしたように冬十郎が手を隠す。 「冬十郎様は、悪い魔女なんですか?」  跳ねるように冬十郎が振り返った。  髪がひるがえるようにふわりと動くのをわたしは見つめる。 「そうかもしれない……」  冬十郎は一度目を伏せて、かすかに震えてわたしを見た。 「……私が怖いか」
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