27 誓いのキス

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 寝室のベッドに姫を寝かせた。  あどけない唇に指をかけ、ほんの少し開かせて、私の唇を重ねた。  姫はぼんやりと私を見ていた。 「これ、何ですか……」 「接吻だ」 「せっぷん……?」 「ああ、口付けのことだ」 「くち、ずけ……」  何も疑わず、姫は無邪気に私を見返す。 「あ……ねむり姫が目を覚ました……ええと、キスのこと?」 「そうだな。今はキスというのが一般的か」 「わたしは眠っていないのに」  と、姫がくすくすと笑う。  なぜ、これほどまで何も知らないくせに、『男を誘う目』を持っているのか。  呪わしい血だと思う。  姫の髪を撫でて、そっと顎に手をかける。  姫は微笑んで私を見ている。 「もう一回、キスしてもいいか」 「はい」  薄桃色の小さな口を、わざと音を立ててちゅ、と吸う。  嫌がる様子がないことを確かめて、もう少しだけ深く口付ける。 「んん……?」  姫が瞬いた。 「このキスは、私は姫が好きだという意味だ」  姫がふにゃっと柔らかく笑った。 「わたしも冬十郎様が好き」  突然、姫の顔が滲んで見えた。  驚いて瞬きすると、気持ちが溢れるように、涙が一粒零れた。 「冬十郎様……?」 「もう一度、言ってくれ」 「わたしは冬十郎様が好……」  その言葉を飲み込むように、唇に吸い付く。  何の知識もない姫の口に舌を押し込んだ。  驚いたように目が見開かれたが、抵抗は無かった。  姫はされるままに大人しくしている。 「ふ……ん……」 「姫……目を閉じて……」  姫はぎゅっと目を閉じた。  従順なのをいいことに、二度、三度と深い口付けを繰り返す。  こわばっていた姫の体から、徐々に力が抜けていく。 「はぁ……」  姫が吐息を漏らす。  唇についた唾液を、私は舐め取る。  姫は目を閉じたまま、口角を上げた。
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