27 誓いのキス

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「なんだか、頭がふわふわする……」 「そうか……」  私は姫の白い首に唇を当てて、強く吸った。  姫の体がビクッと震えて、目を開いた。 「怖いか」 「ちょっと痛かった」 「痛いのは嫌か」 「痛いのは、やです……」  首にくっきりと残った跡を、指でなぞる。  姫の瞳に、不安げな色が浮かぶ。 「冬十郎様……?」 「私がどうしても姫に痛いことをしたいと言ったら?」  一瞬瞳が揺れたが、姫は覚悟したようにまっすぐ私を見た。 「冬十郎様が望むことなら、してください」 「痛くてひどいことでも?」 「はい、痛くて、ひどいことでも……」  私があの金髪の男と同じことをしようとしているのだと、恐らく姫は想像もしていない。  男女の違いもあまり意識していなかった姫に対して、自分の情欲が醜く思える。  いたたまれなくて、姫から目をそらした。  そっと体を離して、息を整える。  姫がゆっくり体を起こすのが横目に映った。  私を怖いと思っただろうか。  二人のベッドから出ていくのだろうか……?  小さな手が私の肩をつかんだ。  ハッとして振り向くと、姫が膝立ちでしがみつくように伸びをして、不器用に唇を押し付けてきた。 「冬十郎様、大好きです」  胸の内が震えた。  また涙を零しながら、細い体を抱きしめる。  私は清香のようには生きられない。  姫亡き後に、永遠にその面影を追い求めながら生きるなんて、きっとできない。 「私も姫が好きだ……」  この子が死んだら、私も死のう。  我ら一族は、不老であっても不死ではない。  自ら強く死を望めば死ねるのだから。
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