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リビングのソファーの端の方に榊に座ってもらい、正直は横向きの体勢で寝そべると、榊の腿に頭を乗せた。
「耳の中、見えますか?」
「見える」
「あまり奥の方には突っ込まないでくださいね」
「わかった」
初めてだという割に、もともと手先が器用な榊は手際よく耳かきをしていく。正直は気持ちよさそうに、目を閉じていた。
「終わったよ」
「じゃあ、仕上げに、フワフワで耳の中きれいにしてください」
「なるほど。そのためにこの白いのが付いているのか」
言われるままに榊が仕上げをすると、正直は上半身を起こした。
「あ、もうガサガサしていない」
左右に頭を振って確かめると、再び榊の膝枕で、今度は反対の耳を差し出す。
「こっちの耳もしてください」
「了解」
「俺、耳かきしてもらうのって、好きなんですよ」
正直は眠たげな声で言う。
「俺が終わったら、榊さんにもしてあげますね」
「いや、結構だ」
「遠慮しなくていいです」
「遠慮していない」
「俺、こう見えても、耳かきするのうまいですよ」
どうやら榊は、正直の言葉を信用していないようだ。
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