せめて完璧な終末を

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 ホールから出るころには太陽は中天をすぎていた。  振り返ると、赤いキャップのおじいさんはホールの扉を施錠している。 「もう、閉めるんですか」 「ん? ああ、さっき二回見てくれた子たちか」  おじいさんはそう言いながらはこちらに向き直る。 「午後は隣町で映画を流すのを手伝わなきゃなんなくてね、今日は、というか、ここのプラネタリウムはさっきのでおしまいってわけだよ」 「……そうですか」  ぼくがそう言うと、おじいさんは人好きのする笑顔をこちらに向ける。 「ありがとうね、ここに来てくれて」 「こちらこそ、きれいな星空をみせてくれて、ありがとうございました」  ぼくが言うと、彼女も鼻をすすりながらぺこりと頭を下げる。  おじいさんは嬉しそうにわらって、駐輪場に向かうぼくらに手を振ってくれた。
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