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「うーん……最近はあんまならないから、もしかしてと思ったけど……無くなった訳じゃなかったか」
私はティッシュを取って濡れた目元を拭いた。
「……そっか」
顔を上げると幸雄が悲しそうな顔をしていた。
「ちょっと、辛気臭い顔しないでよ。本当に泣いてるわけじゃないんだから」
「いや、そうなんだけどさ……やっぱり愛する人の涙はあんまり見たくないって言うか」
言いながら頭を掻く幸雄。その言葉に、私の胸が暖かくなる。
また、頬を伝う感触があった。
「あー……気持ちは嬉しいんだけど、涙止まんなくなっちゃうからそろそろ辞めにしてケーキ食べない?」
私は嗚咽したり、声を震わせることもなく真顔に近い困り顔で言った。
「そ、そうだね。切り分けよう」
幸雄が思い出した様に包丁を手に取る。
私はそれを見ながら涙を拭いていた。
……全く、難儀な体質になってしまったものだ。
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