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第一章 二番目に好きな人
(一)
今チャペルのバージンロードを歩く私、今井琴子は世界一幸せな花嫁だ。夫となる上杉修司とは大恋愛の末に結ばれたわけではない。でも、大学の先輩と後輩という微妙な距離を保ちながら、長い年月を過ごしてきた。それに、世間では「二番目に好きな人と結婚した方が幸せになれる」といわれているじゃないか。
それならば、修司は私にとって天が与えてくれた最高の相手だった。お互いの性格や考え方を理解し合い、パートナーとして最良の関係を築いていける間柄だと思える。
見た目も申し分ない上に、予約が取れないほど人気のリゾートホテルを日本全国のみならず、海外まで経営する上杉リゾートの御曹司。そうくれば、どんな相手でも選びたい放題で、花嫁候補には事欠かないだろう。かく言う私もずっとそう思い込み、雲の上の存在だと一線を引いていた。
そんな彼を二番目に好きな人などと、どの口が偉そうに語れるのか。でも、かつて私には身を焦がすほどに恋した男がいたのは忘れがたい事実だった。
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