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3-3
「あの、おじさん。この世界にお詳し......」
青井の話を遮るようにして、おじさんが一言放った。
「奴は戻らんぞ」
「え?」
青井が予想外の言葉に驚いて聞き返すも、二度目はなかった。
心にわだかまりをを抱えながら彼女は五島のもとへ。
二人は2歳児の集まる部屋の手前まで来た。
「あ、いた!」
青井が先生と遊んでいる木村を見つけ、大声で言うと、
五島が慌てて青井の口を塞いだ。
「何、大声出してんだ!
俺らが大人だってことがバレれば、目を付けられる。
慎重に呼び出すんだ」
すると、先ほどの青井の声を聞いた先生が二人の居場所へ向かってくる。
「早速バレたか。これはまずい。どうすれば」
頭を悩ませる五島。
先生の右足が部屋と廊下の境界線を踏む。
もう終わりだと腹を括ったそのとき、
「せんせーい!」
と、先生に飛びつく子どもが一人。
おじさんだ。
先生はおじさんを抱きかかえ、あやし始める。
抱っこされたおじさんとは一瞬目が合い、
彼はアイコンタクトで部屋の中に入るよう合図してきた。
すかさず青井と五島は部屋へ突撃。
二人は木村を無事に呼び出し、三人で安全な場所へ腰を下ろした。
「先輩、助けてくれたんですね! ありがとうございます!
ところで、こちらの方は......?」
「うん、私の元カレの翔。
偶然ここに来てたみたいで色々と手伝ってもらっているの」
五島が木村に対して軽く会釈をする。
「あなたが翔さん! 青井先輩から話は伺っていますよ!
先輩、念願の人に出会えてよかったですね!」
青井と五島は目を見開き、互いを見合わせ、そっぽを向いた。
二人から気恥ずかしさがありありと感じられる。
少し沈黙が続いた頃、おじさんが三人に合流した。
ここで木村がおじさんを一目見て、衝撃の発言を繰り出す。
「たっくん? たっくんだよね?」
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