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 「うわっ、遅刻しちゃう!」 東京の夢見るOL 青井香澄が、息を切らして都会の喧騒を駆け抜けている。 サンドイッチを大口で頬張りながらの走りは、彼女にとっては慣れたものだ。 彼女は今年で29歳。体力の無さが気になり始めた今日この頃である。 タピオカ飲料をストローで吸うのにも、僅かながら疲れを感じるように。  「あいつ、メール見てくれたかなぁ......」 実は昨夜、青井は元カレにメールを送っていた。 いや、”昨夜”と言った方が正しいか。 彼女が丸2年の交際に終止符を打ったのは丁度1年前。 ほんの些細なことがきっかけで喧嘩し、 変に意地を張ったまま青井の方から別れを切り出した。 そして、メールの内容はこうだ。 『久しぶり、元気?  職場の近くにオシャレなカフェが最近できたらしくて、  よかったら行かない? ホントに暇なときでいいからね  そうそう、新しいお相手見つけたりしちゃったのー?  なんちゃって(笑)  あんまり深く考えないで(笑) じゃあ、またね!』 文章から滲み出る未練はタラタラどころではない。 青井は半年ほど前からこれに似たメールを度々送っているが、 一度も返信は来ていないのだ。 彼女には某してんじゃねぇーよ系駄菓子を授けよう。  青井が角を曲がると、会社の2つ下の後輩 木村陽子が 同じようにこちらへ走ってきている。 二人は激突を避けられる距離にはなかった。 「わっ、先輩おはようございます!」 「陽子ちゃん、おはよう!」 手短に挨拶を済ませ、二人は正面衝突。 青井はその場で気絶してしまった。  しばらく時が経ち、青井は目を覚ました。なぜだか身体が異様に軽い。 ん、ここはどこ?誰かの家の中かなぁ。 目の前のテーブルが凄く高いんだけど。 もしかして私、身長縮んだ?そんな訳......あるわ。 よく見たら手もめっちゃ小さいし、全然速く歩けないし。 もしかして私、子どもになっちゃった?そんな訳......あるわ。  後輩との衝突から、青井香澄は4歳児になっていた。
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