俺が悪魔落ちしても愛してくれる姫

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俺が悪魔落ちしても愛してくれる姫

俺になくて、君にあるもの、それは心がちゃんと中にあるのか、だ。何故、俺はちゃんと勉強しなかったんだろうか、だから、俺は悪魔なんかに呪われるんだ。彼女はこの世の中で悪にも屈しない、とても美しく癒やしのお姫様なのに、それなのに……。こんな闇落ちした王子に……、 「ヒビト、大好きだよ」 あの優しい笑顔に何度も救われた、愛してしまうのに、俺の中に存在する悪魔がそれを許しはしない。 俺、ヒビトは全く勉強とかが大嫌いな王子だった。本当は自分が一番頑張らなくてはいけないのに、頑張ろうともせず、ただ、女性や友人と遊びまくっていた中で、彼女、カリアはお見合いの席で現れた。ピンク色の髪色で、目は髪色とは合わないライトグリーンで、細身なお姫様だった。彼女は俺とは正反対で、努力の塊のお姫様だった。その対面のときのことは忘れはしない。今まで会った女性の中で俺は相当、一目惚れしたのだ。  「初めまして、ヒビト王子。私はカリアです、よろしくお願いしますねっ」 見た目の可愛さと中身のしっかりさにはこのときは気づきもしない。 「は、初めまして……!ヒビト……です」 とても緊張して、焦るような口調で挨拶してしまうせいか、カリアはクスッと笑うのだった。その笑顔はとても可愛くて、見惚れてしまった。 「ん?どうしました?ヒビト王子?」 「あ、い、いえ……、その可愛いなぁって……」 言葉詰まりながら、恥ずかしくも、言葉にした。すると、カリアは驚き顔で自分を見ているのだ。 「へ?何か俺、おかしい事言った?」 「い、いえ、久しぶりに言われたので、どう反応した方がいいか、分からなくて、困っているところです……」 「え!?久しぶりって嘘だろ?こんなにも美しくて、可愛いのに……!?」 更にびっくりした表情で自分を見つめるカリアにちょっと、目を逸らしてしまう。そんなに見つめられると心臓に悪いと思ったからだ。 「ヒビト王子って、とても素直な人なんですね……。私はこの髪と目が違うから可愛いや、美しいとは言われません……。言ってくれた人なんて私の兄くらいです……」 あれ?なんか気に触るところに触れてしまったのかと、慌てている様子を見て、カリアはまた笑うのだった。 「大丈夫ですよ、ヒビト王子。久しぶりに言われて凄く、凄く嬉しかったです」 微笑みながら言う彼女に俺は何も言えるわけもなく、黙る。彼女は目の前のテーブルにある紅茶を軽く飲み、俺の目を見てきた。 「ヒビト王子って、皆さんが言っていたような方ではないですね、とても私としては好きですよ、好印象です」 その言葉に俺は心を打たれた。今まで真面目にしてこなかった俺にとっては物凄く刺さる言葉で何も声が出ないくらい、響いた。 「ヒビト王子?聞こえてます?」 「ごめん……。俺は皆が言ってた通り、落ちこぼれの王子で、何もして来なかった駄目なやつなんだよ、カリアさん」 「え?私はそう見えないって言ったんですけど、そうなんですか……?」 これは叱られるかもしれないと覚悟の上で俺は頷いた。すると、彼女は席を立ち上がり、俺のところまで歩き、近くになり、止まる。 「大丈夫ですよ、まだ王子なんですから、ここから頑張れば、まだやれます」 と、上からギュッと抱き締めてくれたのだ。このダメダメな俺をだ。そんな人なんか、俺は知らなかった……。そう、このとき知った。こんなに素敵な女性がこの世の中には存在するのだと。 「……好きだ……。カリアさん……」 初めて会ったのにそんなことを普通に呟いては泣いていた。俺にとってはこのまま返したくないとか、変な想像しかなかった。 「変な人だったら、このまま承諾せず、帰ったと思いますけど、貴方は素敵な人だから、いいですよ、お見合いの話。私は貴方なら付いて行きたいです、ヒビト王子」 「本当に?いいのか、こんな軟弱の俺で?」 「いいえ、軟弱ではないですよ、気付いてないんですね、ヒビト王子は素直なところが凄いんですよ?」 「凄い??」 「ええ、とても凄いですよ」 と、優しくまた包むように抱き締めてくれた。俺はその優しさに甘えた。普通に抱き締められた中で涙を流していた。 「これからよろしくお願いしますね、ヒビト王子」 「こちらこそ、よろしくお願いします……カリア……」 涙を流しながらなんて、情けないと今ならとても思える恥ずかしい初対面だった……。 でも……、俺はその軟弱さのせいで、知らず知らず、最悪な出来事に向かっていた。 「ここ最近、外が騒がしいな……」 「そうですね…何かあったのかな?」 俺はカリアに王国の勉強を教えてもらいながら、そんなことを話していた。父や母がここ最近、食事とかで眉間に皺を寄せながら、美味しいとも言わずに食べていることが物語っていた。 「気になるから、ちょっと聞き込みしてきていいかな?」 「そうですね、私も気になるので、休憩兼ねて行ってきてください、待ってますね」 「ありがとう、行ってくる」 そう言って、カリアの元を離れて、部屋から出るとやはり騒がしかった。そこらへんに兵隊などがあちらこちら居たのだ。とても変だ。こんなことは前はなかったのだ、だから、何かあったとしか言いようがないので、近くの兵隊に駆け寄った。 「おい、何が起こってるんだ?」 兵隊らは俺を見ると、かしこまりつつ、冷や汗をかいているようだった。 「なぁ、何が起こってるんだ?」 「え、あ、いえ、それは……言えません」 「は?何でだよ!?こんな大事になるとか気になるの当たり前だろ!?何で言えないんだよ!?」 兵隊らは敬礼して、急ぎ俺から離れようと走って何処かへ消えてしまった。何故、離れるかは検討が大体ついてしまう。そう、俺の親から言うなと影で言われたとしか思えないのだ。なら、直接、問い質す方が手っ取り早いと思い、親のいる部屋へと向かうと、やはり、兵隊が扉前にいるので、とても怪しかった。 「おい、何で兵隊がいるんだよ、ここに」 「っ……!ヒビト王子、これはこれは……。ですが、入らせてはいけないと言われておりまして……」 「何でだよ、知ってるだろ?教えろよ!!」 兵隊はとても汗をかきながら、首を横に振るのだ。それでも気になるのが俺の性格だ。意地でも中に入ってみせると、兵隊が持っている剣を奪い、自らの首元に持っていった。 「これでもだめって言うのかよ、お前……!」 「そ、それは……!お止めください……!わ、分かりましたから、お通ししますから!!」 「そうかよ……」 剣を捨て去り、兵隊が開いた扉の中に入ると……俺は騒然としたのだ。それは親が鎖に縛られ、暴れまくっている姿だった……。 「え……、どういうこと……?」 「鎖を解けぇぇぇぇぇぇ……!!!!」 「殺したい殺したい殺したい殺したい……」 兵隊が冷や汗を大量にかいている謎がまさかのこれだとは思わず、腰が砕ける感覚で、地面にすっと、尻から落ち、絶望のような目で親を見ていた。 「何でこうなったんだよ?なぁ……?何で、何で、何で、何で……」 「それは悪魔です……」 「は?あ、悪魔??」 その言葉に反応するように親二人はこちらを見て叫び出すのだ。鎖を解けだの、殺したいだの、言うのだ。この国の王様と王妃がこんな状態なんてとてもじゃないが、言えるわけもない……。 「悪魔……がいるのか……」 「はい……街にもこんな恐ろしい状態になったものもいて……悪魔の捜索が行われています……」 「そうか……それで騒がしいくらい兵隊があちこちにいるのか……悪魔を警戒してるんだな……ご苦労様……」 そう言いつつ、俺はヨロヨロした足を辛うじて、引きずるように歩いた。でも、あの親の姿を見て普通にいられるわけもなく、目からは涙を大量に流しながら、壁を頼りに、足を進めて、彼女のもとに、向かった。 「なんで、なんで、なんで、なんで、俺の親なんだ、何でだよ、何でだよ……」 そう苛立つような呪文のような口調でブツブツ言いながら、彼女といた部屋に辿り着き、扉を開けた瞬間、床に倒れた。 「ヒビト王子……!?」 びっくりした彼女は俺の顔を見た瞬間に悟ったようだった……。 「何かあったんだね……。いいよ、落ち着いてから聞かせて……ひとまず、そこのソファに座りましょ……」 彼女は自分より重い俺を肩に背負い、ソファに運んでくれた。そして、頭をその優しい手で撫でてくれた。それでまた涙が大量に流れていくのだ、あの壮絶な光景を思い出したからだ。 「……何でだよ、何で俺の親なんだ……他にもいるだろ……なんで……」 「……大丈夫よ、大丈夫……」 「嫌だ……嫌だ……やっと……やっと……なのに」 もうやっと、ここからやり直せると思ったのに……どうして、こうなるんだと……神様を呪いたくなった。どうして、俺にこんなに試練を与えるんだ……要らない試練だと……思った。泣きじゃくる俺を優しく撫でる彼女以外、俺を慰めてくれる人はいない……。そう思うと涙なしにはいられなかった……。そうやって……一時間くらい経った。 「そろそろ落ち着いた?言える?言えないのなら聞かないよ?」 「いや……言わないと……駄目だ、絶対に……」 「分かったわ、聞くね」 彼女は俺の目をじっと信じるような目で見てくれていた。深呼吸をして、俺はそのときの光景をそのままソフトにも包まず、口にした。 「……そんな……それは……」 「……だから……悪魔を倒さなきゃ、治らないかもしれない……俺の親は……」 「かもしれない……、でも、やれることはやらないと駄目だもんね……うん……」 彼女は俯かず、俺の瞳を見ていた。きっと、心の中はぐちゃぐちゃになっているはずなのに、わざわざ、俺のために泣かないでいてくれるところには感謝しかない。 「ありがとう……信じてくれて……。やっぱり、俺のお姫様は俺より強いな……」 「そんなこと……!」 「ありがとう……本当にこんな俺を信じてくれて……」 「当たり前です……!」 その微笑みを見て、安心した瞬間に最悪な出来事に出くわした。耳元で聞いたことのない恐ろしい声が聞こえた……。 【お前か、あの出来損ないの子どもは?なぁ、そうだろ?】 「は?」 「どうしたの??」 【ハハハハ!!最高だな、滑稽だな?お前、この状況、さては分かってないな?バカだな?本当に】 俺はこの謎の存在に気付くのが遅れたせいで、目を開くと、彼女の首元を締めていた。そう、アイツが言っていたことはこれだったのだ。 【ハハハハ、最高だな、お前。俺がどんなやつか見当ついてるはずなのに、トロいな?】 「ハァァァァァァァァ!?」 意識がまだちゃんとアイツに乗っ取られていなかったため、カリアは助かった。だが、ちゃんと乗っ取られていたら、彼女は俺の手で殺されていたのだ……。それを思うと動くに動けない。やはり、俺は情けないんだ、肝心なときに……。 「最悪だ……お前だろ……親をあんなにしたのは……お前だろ……悪魔はァァァァ!!」 【これで、お前が大切にした女はお前のことを悪魔扱いするだろうな?ハハハハ、滑稽だな、面白いなぁ?なぁ?】 と、俺に語りかけつつ、心臓辺りを撫でてきたが、俺は何も言えないので、固まっている。これで下手に何かしたら、死んでしまうと思ってしまったせいだ。 「ヒ、ヒビト……」 俺に殺さかけたのに、俺の名前呼ぶとかどうかしてる、なんで……そんな愛しそうな目で俺を見れるんだ……。少しだけ、ゾッとしたのは何でだろうか……。 「ヒビト……」 「やめろよ!!お、俺がど、どんな状況でいるのか分かってるのか!?」 「……わ、分かってるよ……ヒビト。貴方が私を殺すわけないものね……。私を殺そうとしたのは悪魔よね……」 彼女は全然、俺より強い……。彼女が王子だったら、どんなにいい国になっただろうか……。何故、こんな悪魔に容易く取り憑かれる俺なんかが、王子なのか、酷く運命を呪いたくなった……。だが、その考えこそが悪魔が食らいつく理由になる。 「駄目よ、貴方はこんなところで負けちゃ駄目よ……。貴方はとても素敵な人なんだから……ね?」 「無理だよ……君の思った通りの男なわけないじゃんか……君は俺を信じすぎなんだよ」 【いいな、お前。やっぱり、取り憑いて正解みたいだな、ハハハハ!!】 俺の心臓を撫でて、悪魔はそう完全に取り憑いたのだ。俺の闇のような思いの中にアイツは涼し気な顔で取り込んだ。 【お前の信じた男に裏切られ絶望しろよ、なぁ、お姫様?】 でも、彼女はそれでも、真剣な目で悪魔に取り憑かれている俺を見ていた。眩しかった、俺には到底、辿り着けない、眼差しだった。 「諦めないでよ……!私は貴方のこと信じてるよ、ねぇ、ヒビト!!」 強い口調で、彼女は俺に呼びかけるものの、もう取り憑かれているせいで、その呼びかけにも答えられない。ただ、悪魔の見ている世界を見ているしかできない……。 【憎いな、お前。やっぱり生かす価値はないみたいだな、殺す……殺す……】 「貴方が目を覚まさないなら、死んでもいいわ……」 俺は先程まで見つめていた死んだ目が、反応した。彼女が死ぬ……?それは……、それは……、それは……、ダメだ、ダメなんだ……。俺は悪魔をどうにかしようと身体をよじると、悪魔は彼女ではなく、俺を睨んできた。 「俺を殴れ……、カリア……!」 「……もう……何言ってるのか分かってるの」 呆れた顔をしたカリアだったが、すぐに嬉しそうに強めに俺の腹を殴ってきたのだが、予想より痛くて、蹲る。 「悪魔……貴方は許さないわ……」 【俺もお前らを許すわけない……お前もコイツも殺す……!!】 そして、悪魔は俺の体の中から、俺を殴ってきたのだ。 「ぐはっ……!?」 「……悪魔……出なさい、そこから……!!」 彼女は悪魔を中から取り出すために、俺の頬を引っ叩いたが、これも痛かった。でも、しょうがないことだと思った。でも、これは時間稼ぎだったのだ。  「苦しい……苦しい……カリア……」 【バカだな?これが時間稼ぎだと分かってないのか?】 「お前を殺すよ……カリア……」 「はっ……!!悪魔め……!!」 そして、俺は最早、操り人形のように悪魔の魔力が流れてきて、彼女の方に向かってしまうが、もちろん、かわされるのだ。 「元々お前が悪いんだ、俺を好きにさせたせいだよ、なぁ……!」 「いいよ、ヒビトのためなら、死んでもいいよ……来て……?」 俺は足が止まった……。何でだろうか……やっぱりこの子のために俺は生きてたんだろうか……?なら、俺も死ねるよ……君のためなら……。 「悪魔、お前の予想通りには行かない……俺を殺せよ……」 【は?は?は?ハハハハ!は?】 「ごめん……俺はこれ以外できない……君を救うことはできない……」 「そんなのハッピーエンドじゃない……!」 そして、彼女は俺に軽くキスをした。すると、悪魔は暴れだしたのだ。 【ギィヤァァァァァァ】 「え?え?」 「私とキスできるなんて、やっぱり貴方は凄いね……大好きだよ……」 全くどういうことなのか、分かってない中、悪魔は少しずつ、消え去っていくのだ。 「私ね、魔女なの……失望した?」 「え?それってどういうこと?」 「この悪魔を殺すために私はここに来たのよ?でも、そんな中で君に惚れちゃったの……隠してごめんね?」 え、え、どういうことか全く分からないまま、俺は彼女に抱き締められた。 「驚いてるけど、引いてないんだ。やっぱり貴方は私が惚れるのは当たり前ね」 「……俺は、き、君が魔女なんて知らなくても、きっと……」 「それ以上は言わなくても分かるわ、ヒビト。これからもよろしくね……悪魔落ちの王子?」 何それ、そんな酷い名前、思いつかないでよ……。と、俯くと、彼女は頭を撫でて、俺の額に口付けをしてくれた。 「俺も愛してるよ、カリア……」 このときの出来事がまさか、盛大にこの国に語り継がれる話になるなんてことは俺はまだ知らない。その後、親は目を覚まして、その他の操られていたもののも、元通りになったのだった。 俺はきっと、これから盛大に悪い王子と言われるのは間違いない、でも、彼女がいる。だから、きっと大丈夫だと思う。きっと……。
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