寂寥の時節≪せきりょうのとき≫

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 少女の家は古く、小さな平屋。  寺とは、現在の住職の先代が他界するよりも以前からのお隣様だった。  元々少女の父の生家だったその平屋は、祖母との同居に伴って戻ってきた父、その妻と娘の四人で暮らしていた。同居のきっかけは祖父の他界に伴う祖母の介護のためだった。  今は祖父も、――その祖母も、両親もが、隣で眠っている。  母が祖母の介護から解放されたのは去年の秋頃だった。突如体調を崩した祖母は少し離れた大きな病院に入ることになった。その容態が急変したのが、つい先日のこと。  電話があったのは深夜だった。  病院へと急いだ両親の乗った車が事故に巻き込まれた。祖母も持ち直すことなく、両親の訃報が届くより先に息絶えた。そして、病院に搬送された両親もそのまま――。  一夜にして、少女は独りになった。  通夜、葬式を終えたのが、ちょうど昨日のことだ。
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