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「よかったんじゃね?」と、オレ。 「すっごくよかったわぁ」と、視聴覚室の店長。久しぶりのライブに、若干涙ぐんでる?涙もろいリンバちゃんもウルウルしている。  でも、Mはそうじゃなかった。いつもの爽やかな笑顔はない。 「どうしたん?」と、オレ。 「音楽は・・・何も救わない」 「え?」 「確かに、音楽は楽しいよ。自分らの曲を、先生やリンバちゃんが素晴らしい演奏で仕上げてくれました。本当に嬉しいです。1時間くらいは、嫌なことや辛いことを忘れることができました」 「ほら、元気になったじゃん」と、オレ。  Mは首を振った。 「でも、演奏が終わったら、現実が待ってる。音楽なんて、気を紛らわせただけ」  キィ子や校長は、Mの言うことをじっと聞いていた。 「オレはちょっと元気になれてよかったけど」と、オレ。 「私も元気をもらいました。でも、先輩の言うことが本当は正しいと思います」と、リンバちゃん。また空気は重く沈んでしまった。おっと、もう泣かないでね。
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