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「この店とか、僕んとこ以上に大変なんだよな」と、M。  ライブハウスの前には、オレらのバンドのドラム、通称リンバちゃんがちょこんと座って待っていた。リンバちゃんはブラバンのパーカッション。苗字がややこしく(いまだに覚えられず)マリンバも叩くので、本人が「マリンちゃん」と呼んでほしいとリクエストしてきたが、それじゃあ可愛すぎるってことでリンバちゃん。ちなみに1年生だが、超小柄で小学生みたいに見える。  と、リンバちゃんが顔を上げると、ほっぺに涙が。 「どうしたの?」と、Mが優しく声をかける。ったく、王子さまだねぇ。 「昨日の夜、パパとママの声が寝室から聞こえてきて・・・」と、リンバちゃん。顔を見合わせるオレとM。 「それはちょっとショックかもしれないけど・・・」と、M。以降、先ほどと同じようなおしべとめしべ的な会話。気まずい雰囲気に助け舟、ライブハウスのドアが開いて店長登場。 「あ、みなさんお揃いね。Mくん、相方くん・・・あれ?マリンちゃんも?」  ん?店長はリンバちゃん知ってる?しかも、マリンちゃんって呼んでる? 「はい、店長さん。マリンもですよ」と、涙を拭うマリンバリンバ。オレは断じてマリンちゃんとは呼ばないからな。でもひょっとして本名? 「あれ?泣いてるの?もう、 M君ったら女泣かせなんだから」  ブンブン首を横に振る M とリンバちゃん。あの、オレが女泣かせってことはありえない?
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