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「店長、リンバちゃんご存知なんですか?」と、M。
「もっちろん!マリンちゃんのお父さん、すっごい有名なジャズドラマーなの」
「いやいや、それほどでも・・・」と、謙遜するリンバちゃん。
「うちの常連バンドさんのリーダーなの。でもマリンちゃんのおじいちゃんの町工場を継がないといけなかったからプロにはならなかったの」
ちなみに店長、若干オネエっぽい喋り方だが男性である。
「じゃあ、マリンちゃんのお父さまって社長さん?」と、M。おい、うっかりマリンちゃんになってるぞ!
「リンバちゃん、社長令嬢じゃん」と、オレ。
「ちっちゃい町工場ですから」と、再び首をブゥンブゥンと横に振る。
「でも、コロナで大変なんだよね」と、店長。
「そうなんです。昨日もパパとママが社員をリストラするかとか、借金するかとか、そんな話をしてるのを聞いちゃって・・・」
それで泣いてたんだ・・・おしべとめしべ的なことではなかったってことで、ちょっと安心。いやいや、安心しちゃダメだろ。リンバちゃん、また泣き始めた。
「私、のんきに部活やバンドなんかやってていいのかなって・・・」
Mとおんなじセリフだ。オレんちだけなのか、経済的にあんまり影響ないのは。とはいえ、オヤジも大学の講義やら実験ができないって、学会も中止になったって言ってた。空気がどよ〜んと重くなる。
「まあ、そんなこと言っててもしょうがないしさ、みんな手伝ってよ」
オレたちは店長に続いて、今は古着屋さんになっているライブハウスに入った。
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