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俺の母ちゃんの趣味は小説を書く事だ。小説投稿サイトという母ちゃんの同類が沢山いるサイトで、なんでもかんでもネタにして小説を書いては投稿している。
ふーんそれが?って言ったな。
俺の母ちゃんみたいな家族が家に一人いるとどうなるか知らねえからだ。
俺も弟も、親父も、背が高い。近所では有名だ。
通りすがりの知らない人に「○○さんちの息子さんお出掛けかい?」って四六時中声をかけられ続けてみろ。悪いことをしなくても有名になっちまって、もう悪いことができないんだぞ。
その上、自分達がやったり、話したりした友達のやっちまった話は、次の日になると小説になって不特定多数に読まれるんだ。恥ずかしいぞ!!
俺と弟の望みは、人並みの身長に縮んで、ひっそりその他大勢に混じって、平和に生きることだ。
なのに。
母ちゃんは外面はいいが、常に目と耳を働かせて、面白いと思った事をネタにしてしまう。恐ろしいことに聞き上手でもあって、とんでもないところからネタを見つけてくる。
家にいると隠しもしないで読めと誘う。そしてまんまと読んでしまうネタバレしている俺ら息子は、またやってるよ!とひたすら人に母ちゃんの正体がバレやしないかとドキドキするんだ。
読む人が読んだら自分がネタにされていると解るんだぞ。恥ずかしいぞ!
あんまり好き勝手にネタを拾ってくるので、もう辞めろと喧嘩もしたが、母ちゃんはそれもネタにしたのでどうしようもない。体格的に俺らの方が強いが、俺と戦ってあばら骨を痛めながら小説を書く母ちゃんの執念には負けた。
ネタにされないように色々工夫したけど、そうすると家族以外の人が餌食になるので、諦めた。
母ちゃんを止めるには何処かに封印して一切のネタ元を断つしかない。
俺の初詣の願いは毎年一つだ。母ちゃんが身バレしませんように、だ。
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