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翌日は火曜日。開店1時間前の9時に出社して、坂上店長に挨拶する。
「おはようございます、店長」
「おはよう、美穂ちゃん。2人のときは奈津美でいいわよ」
「じゃあ、奈津美さん。この度はおめでとうございます。LAに発つのはいつですか?」
「3週間後よ。それまでに、美穂ちゃんに完璧に仕事こなせるようになってもらわなきゃね」
えっ、完璧、に?そんな数か月で完璧に出来る仕事ではないだろう。
「え、なんでまた?」
「実は・・・私がLAにいるあいだ、2年くらいかな・・・お店を全面的に美穂ちゃんに任せようと思って」
「本気ですか?私、入社したばかりですよ。他の先輩方もいるのに、なんでまた」
「みんなにも話してみようと思う。美穂ちゃんの仕事にかける情熱は人一倍だからね。みんなも分かってくれると思う」
じゃあ、私、がんばんなきゃ!店長かぁ。覚えること、たくさんあるんだろうな。
「だから、ごめんね、しばらくのあいだ、残業続きになっちゃうと思うの。日曜の休みは確保するから安心してて。・・・そういえば、ご両親に和希紹介するの?」
「はい・・・今度の日曜日に家に来てもらいます」
「和希、緊張してるでしょう」
「はい、今からすごく(笑)なんだか、私までつられて緊張しちゃいます」
奈津美が微笑んだ。
「なんだか、懐かしいわ、あの頃が。私たちは年の差で双方の両親に大反対されたけど、美穂ちゃんと和希なら大丈夫ね」
「・・・でしょうか?」
「自信を持って。さぁ、そろそろ、開店準備、始めるわよ」
言われて、ケーキを並べ始める。ふと、このあいだ、店長がした双子の姉妹への神対応を想い出す。どうすれば、ああも柔軟性を持って対応することが出来るようになるのか。店長になるなら、そのへんの柔軟性も大切だ。
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