79人が本棚に入れています
本棚に追加
練馬駅に着くころには、雨はすっかりやんでいた。
「ね、今ごろ、坂上店長、陽平さんと会ってるころかな」
「そうだな。きっと、プロポーズされてるよ」
「私もそう思う」
アパートに着くと、和希が美穂を抱きしめて熱いキスをした。
「美穂が欲しい」
「それは夕食のあとで・・・」
「いや、先に美穂!!」
和希は美穂をお姫様抱っこすると、ベッドルームへ連れて行った。
「ハッピーバースデー、美穂」
和希は美穂に優しくキスをして、スイートベッドタイムに入ったのだった・・・。
美穂は、余韻にぼーっとしながら、和希に聞いた。
「今、何時?」
「8時半。そろそろ、シチュー、あっためようか」
「うん、お腹空いた」
「僕も。美穂食べたけど、まだお腹空いてる」
「もうっ!」
2人はさっと服を着て、和希がシチューを温める。
「ケーキは冷蔵庫に入ってるから」
「うん」
温まったシチューをパンと一緒に食べながら、
「・・・そろそろ、美穂のご両親に挨拶に行かなきゃだな。結婚を前提に付き合ってますって」
「カズキくんのご両親にも会いたい。福岡だっけ?」
「びっくりするだろうなぁ。結婚の『け』の字も言ったことないから」
「まだ、結婚は先よね。来年、カズキくんが就職して、落ち着いてから?」
「そうだな。就職したいデザイン会社はいくつかあるけど」
「とりあえず、顔見せ、だね」
ドキドキする。つきあって、まだ、2ヶ月も経っていないのに結婚を考えるようになるなんて、思ってもみなかった。ある意味、美穂と和希は運命でつながっているのかもしれない、と美穂は思った。
「さて、お待たせのケーキです。じゃ~ん!」
そこにあったのは、美穂の大好きなレアチーズケーキをベースにしたデコレーションケーキだった。”HAPPY BIRTHDAY MIHO FROM KAZUKI" と書いた、ハート形のプレートが乗っている。
「さすが、カズキくん、私の好み、知り尽くしてるね」
「当たり前だろ?どれだけ、密な時間、過ごしたと思ってるんだよ」
「あはは、そっか。でも、これだけ大きいケーキ、2人で食べたら太っちゃいそう」
「ぽっちゃりした美穂も可愛いよ」
「そんなこと言うと、思いっきり食べちゃうよ♡」
「食べよう、食べよう!」
それにしても、2人で18cm丸型のレアチーズケーキ1台は重かった。お腹いっぱいになった。
「ほら、先に美穂、食べといてよかっただろ?食べ損ねるとこだった」
「ん~、もうっ、カズキくんったら♡」
「あ~、もう、10時半かぁ。そろそろ帰らなきゃ、だね。送っていくよ」
「ありがとう。東中野に早めについたら、お散歩しよ」
「いや・・・ご両親の印象をよくするために、早めに帰したい」
「それもそうだね。私のほうから、両親にカズキくんが会いたがってること、伝えておくね」
「よろしくぅ!」
大江戸線で東中野駅へ。美穂を送り届けて、和希は自分の右薬指にしているリングを見つめた。婚約指輪と結婚指輪は自分がデザインする!そう言い聞かせながら。
最初のコメントを投稿しよう!