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「パパ、今いい?」
自室から、リビングに降りて、風呂上がりでくつろいでいた父に語りかける。
「ああ。何だ?」
「カズキくんが今度の日曜日に挨拶に来たい、って言ってるんだけど」
父が遠い目をした。拓也をうちに招待した日のことを想い出しているのかもしれない。
「まだ、婚約したわけではないんだろう?」
「ええ、正式には。私たちまだ出会って2ヶ月経っていないの。でも、彼のことを本当に愛しているからパパとママにもカズキくんに会ってほしいの」
「そうか・・・よっぽど、惚れているんだな」
「えっ」
「拓也くんのときは、正式に婚約するまで、会わせたい、なんて言わなかっただろ?」
確かに。でも、和希とは短い間に、深い愛を育んできた気がする。
「そうね。そうかもしれない。それと、自信があるの。結婚するのが2年後になっても3年後になっても気持ちは揺らがないって」
「ほぅ・・・どんな男なのか、会ってみるのが楽しみだ」
父は優しく微笑んだ。美穂はパパっこだった。この優しい微笑みが大好きだ。
「きっと、パパも彼を気に入るはずよ。・・・ちょっとね、パパに雰囲気が似てるの」
「美穂・・・よかったな。拓也くんとのことがあったときは本当に心配したが。こんなに早く元気になったのは、彼のおかげだな」
「運命の出会い、だったと思う・・・って言うと惚気すぎかな、でも。拓也との別れがあったのは、カズキくんに出会うためだったんだと思う」
「そうか・・・。そんな風に思っているのか」
「ね、何時ごろが都合いい?」
「お茶の時間・・・3時ごろに来てもらおうか。それでいいか?」
じゃあ、私は、カズキくんのためにケーキを焼こう。今まで、食べてもらう機会がなかったから。
「わかった。ありがとう、パパ、大好き!」
美穂は父に抱きついた。父も優しく美穂を抱きしめた。
自室に戻り、和希にメールする。
【カズキくん、今度の日曜日、15時でオッケイ?】
すぐに返信が来る。
【大丈夫だよ。緊張するなぁ。手土産、何がいい?】
【当日は、私がショートケーキ焼くから、何か、日持ちのしそうなものがいいかな】
【クッキーとか?】
【うん、いいと思う。うちのお父さん、ヨックモックが好き】
【じゃあ、デパ地下で買っていくよ。緊張するけど、楽しみでもあるな】
【そうだね。カズキくんならきっと大丈夫。今から緊張していたら、身が持たないよ(笑)】
【確かに(笑)じゃあ、お風呂入るよ。おやすみ】
【うん。おやすみなさい】
カズキくんにああ言ったものの、こっちまでドキドキしてきた。ベッドに入ってもしばらく眠れない美穂だった。
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