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奈津美と陽平とのディナー
火曜日。ちょっと早めに出勤すると、奈津美さんに声をかけられた。
「和希、どうだった?ご両親に気に入ってもらえた?」
「ばっちりです。今度は夏に私の番です」
「ドキドキね?」
「ですです」
美穂は苦笑して言った。
「そうそう、LAに発つ前に、ぜひ、お二人と食事でも一緒にしたいんですけど」
「いいわね。えっと・・・」
奈津美はスケジュール帳を開く。
「来週の金曜日の夜はどう?和希、バイトかしら」
「金曜はバイト休みのはずです。また、カズキくんの予定聞いて連絡しますね」
その日は、店長業務・・・売り上げ予測の出し方とか、レジ締めのやり方とか、原材料の仕入れ先や方法などもろもろのことを一気に教え込まれた。
5時上がりだったが、こんなにくたくたになったのは久々だった。でも、充実感はある。
今日は、和希はバイトで遅いはずだ。今すぐにでも連絡したいけれど、たぶん、火曜は21時上がり。21時半くらいまで待とう。
美穂は、東中野の家に着いて、ちょっと横になりたい、と思った。
「ママ、私、ちょっと休んでるから、もし返事なかったら、先、夕食食べてて」
美穂の母が心配そうに、部屋へ入る美穂の後姿を追った。
美穂はベッドに横になり、次に気が付いたときは時計は23時を指していた。
スマホには、和希からの何件もの着信履歴とメール。
【どうしたの?何かあった?遅くてもいいから、連絡ください】
わっちゃ~。やっちゃった~。和希に心配かけちゃったな。
遅いけど・・・起きてるかな。
電話する。RR・・2コールで和希が出た。
「美穂?なにかあったのか?」
「ごめんなさい、今日、仕事ですごく疲れちゃって。寝落ちしてて、今起きたの。すごくお腹すいてる」
「はぁ~~~~。よかったぁ」
「ほんと、ごめん。あ、来週の金曜日の夜、空いてる?奈津美さんたちとの食事会」
「大丈夫だよ。その日でオッケイ。」
「分かった、伝えとく。ご飯食べるね。・・・でも、こんな時間に食べたら太るかな?」
「太っても美穂はかわいい」
も~っ、和希はホントに・・・。
「・・・ありがと。じゃあ、嫌われない程度に子豚になってくる」
「はいはい。こっちは、あとちょっと課題やってから寝るよ。おやすみ」
課題、多いんだね。専門学校って、大変なんだ。
「おやすみなさい」
階下に降りると、【温めて食べなさい】と書いた、豚の生姜焼きがラップをしておいてあった。一緒に食べられなくてごめんなさい、ママ。
母の料理を食べる日も、もうそう長くはないのかもしれない、料理の腕も磨かなきゃ、と思った美穂なのだった。
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