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翌日土曜日の4時半、和希はSienaでの勤務を終えていた。明日は、美穂をここにサプライズで連れてこようと思っている。今まで、美穂が和希の勤務先に来たことはない。美穂は来たがったが、接客している自分を見られるのが、なんだか恥ずかしかったのだ。明日、5月15日は美穂の誕生日。自分の尊敬する先輩の作ったペアリングを美穂と一緒につけたいのだ。その他に、美穂の好きなスイートピーの花束をプレゼントする予定だ。
とりあえず、今日は、自宅で夕食だな、と思いつつ大江戸線で新江古田に向かう。5時5分前に到着、CLOVERに向かう。CLOVERに入ると、美穂の姿はない。着替えているのだろうか。きょろきょろしていると、坂上奈津美店長に見つけられた。
「美穂ちゃんなら、もうすぐ上がってくるわよ。今日、デートなのね」
和希の元カノ、奈津美さん。嫌いあって別れたわけじゃないけど、もう和希の心は美穂一筋だ。でも、時々、奈津美さんの瞳から、訴えかけられるものを感じることがある。いけない、いけない、そんなときこそ、毅然としていなければ。
「はい、そうです。2人で家で料理を作ります」
「仲がいいのね・・・」
と話していたら、美穂が奥から駆け足でやってきて、和希の腕を取る。そして、上目遣いで、行こう?と訴える。
「あぁ、行こう」
「お先に失礼します」
「お疲れさま~」
「坂上店長と何、話してたの?」
「ん?これから、美穂と料理作ります、って」
「それだけ?」
美穂が不安げに和希を見つめる。
「ん~?ヤキモチ焼いてんのか?そんなやつには、こちょこちょの刑だ~」
こちょこちょこちょこちょ・・・ひとしきりくすぐったあと、和希は真顔になって、
「僕が愛してるのは、美穂だけだから」
と言って、美穂を引き寄せて抱きしめた。
「本当だよ」
じっと見つめたあと、優しくキスをした。・・・続きは、あと、あと。
和希のアパートは、練馬。大江戸線で一駅だけど、2人は散歩がてら歩く。途中に大きなスーパーもあることだし。
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