奈津美と陽平とのディナー

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それから、翌週の金曜日まで、美穂は店長業務の実践を任されていた。そんな金曜の午後、一組のカップルがイートインしようとしていた。 「美紀、このショートケーキも食べたいけど、このミルフィーユもいいなぁ」 「じゃあ、半分こしようかあ」 「でも、ミルフィーユ半分に切るって、至難の業よ?」 その様子を見ながら、奈津美さんが美穂に、うまくやりなさい、と目で指図した。 「あの~、もしよろしければ、ショートケーキとミルフィーユ、こちらで半分にお切りしますが?」 「まじっすか?いいんっすか?お願いします」 「そうしていただけると、嬉しいです」 彼女さんも嬉しそうだった。 「少々お待ちください。奥でカットします」 と美穂は言い、奥にカットしに行った。ショートケーキとミルフィーユを乗せた皿を2つ持って、先ほどのお客さまに渡した。 「ありがとうございます」 2人に感謝され、胸をなでおろしていた。 「美穂ちゃん、よくやったわ。パーフェクトよ」 奈津美が言ってくれた。お客に寄り添う店、CLOVER。奈津美さんが作り上げたこの店を絶対に守り抜いていくぞ、と心に誓った瞬間だった。 「美穂ちゃん、5時上がりね。私は、6時までだから、7時に約束のレストランで待っててね」 「はい。カズキくんと2人で待ってます・・・お先に失礼します」 「お疲れさま」 和希にメールすると、ちょうど新桜台の駅に着いたところだという。そこで待ってて、とメールを打ち、急ぐ。 「カズキくん、お待たせ」 「レストランは青山だっけ」 「だね。初めて行くレストランでドキドキ。奈津美さんたちのなじみのレストランだって」 「今日の恰好、おしゃれだね」 ペールオレンジのシンプルなワンピースだ。もちろん、和希のくれたネックレスと指輪もしている。 「ありがとう。カズキくんも素敵よ」 カジュアルすぎず、フォーマルすぎず、ストライプシャツにジャケットを羽織っている。 大江戸線で青山一丁目まで行った。 街に出た、そのとき、男の声で呼び止められた。 「美穂・・・美穂だろ?」 「えっ、誰?」 連れの女性がいぶかし気に(拓也)を見た。
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