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4時半ごろになって、予報通り大降りの雨が降ってきた。2人とも、折り畳み傘をもってきていたのだが、散歩するには強すぎる雨だった。
「ちょっと早いけど、帰るか」
「そだね。クローバーに、早く着いちゃいそう?」
「電話かけとくか。6時半に変更くらいなら、対応できるだろ」
和希が、クローバーに電話をかけた。6時半に変更でき、電話を切る。
「坂上店長、今日はオフだって」
と和希。なんだ、坂上店長から、お祝いの言葉がもらえると思っていたから、ちょっと残念。
「雨だし、僕がクローバーに寄ってケーキ受け取ってくるよ。先にアパートに行ってて。合鍵、渡したよね?」
「分かった。そうする。今日のディナーは何ですか?シェフ」
「ビーフシチューだよ。昨日、ってか、日付変わってたか。美穂のことを思いながら、時間かけて煮込んだんだ」
「ありがとう。じゃあ、あっためとくね」
「ご飯もセットしてきたから」
「すごい、致せり尽くせりだね」
「美穂姫のためでしたら」
ちゅっ、と美穂の手の甲にキスをする和希。
「じゃ、戻ろ」
なんだかんだで、結局、横浜駅の近くまで来ていた。横浜駅から東横線で渋谷、渋谷から山手線で新宿、新宿から大江戸線で和希は新桜台で、美穂は練馬で降りた。
新桜台で和希が降りるときに、美穂が
「雨強いから、電車使った方がいいよ」
「だな。じゃあ、また、あとで」
「うん。バイバイ」
そして、美穂は練馬駅で降り、和希のアパートに向かった。201号室の前に、人影がある。
「誰?」
「和泉さん?」
と、か細い声が聞こえた。いつものきびきびした彼女とは全く違う、ずぶ濡れになって震えている坂上店長だった。
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