バースデー当日~幸福、そして・・・

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しばらくして、奈津美が隣の部屋から戻ってきた。 「陽平に会ってくる。レストランを予約してあるんだって」 なんだか、嬉しそうだ。さっきまでの奈津美が嘘みたいに。 「そっか。坂上店長、よかったら私の傘、使ってください。一度、家に帰るんですか?」 「ええ。この格好じゃ、ちょっと・・・ね。おしゃれしていくわ。スウェット、ありがとう。洗って返すわ」 「急がなくていいですからね。いい報告、待ってます」 「奈津美さん」 和希が声をかけた。 「奈津美さんは、とても魅力的です。僕にとっては友達だけど、きっと陽平さんにとっては大切な女性だと思うな。自信をもって!」 「ありがとう。じゃあ、行くね」 「じゃあ、坂上店長、火曜日に結果、知らせてくださいね。待ってます」 「いい結果になると、祈ってて」 「はい。じゃあ」 扉を閉めて、ホッと一息ついた2人だった。 「嬉しかったな」 美穂はつぶやいた。 「坂上店長のキス、うまく逃れてくれて」 和希が微笑んで言った。 「美穂がいるんだから、奈津美さんとキスなんかするはずないだろ?僕には美穂しか見えてないよ」 ぎゅっと抱きしめて、キスをした。 「そうだ、ビーフシチュー。食べられる?」 「ん~。まだ、お腹いっぱいだな。美穂、この雨の中だけど一緒に来てほしいところがあるんだ」 「え、どこ?」 「今は、秘密。出掛けられる?」 「オッケイ」 2人はアパートを出て、練馬駅に歩いた。大江戸線に乗って、降り立ったのは青山一丁目。その近くのショッピングビルの2階に2人はいた。 「ここって・・・」 「そう、僕のバイト先のSienaに行くんだよ」 美穂の手を引いて、和希はSienaの前まで来た。 「お疲れさまです」 和希は言った。同僚の店員が 「君が、美穂ちゃん?」 「はい・・・」 ちょっぴり、照れくさい。 「佐倉先輩、例のもの、出して来てくれますか?」 「了解」 トレイに並んでいたのは、キレイなデザインのペアリングだった。 「ステキ・・・これ・・・カズキくんのデザイン?」 和希は肩をすくめて、 「残念ながら・・・尊敬する岡島先輩の一番人気のリングだよ。結婚指輪は、必ず僕がデザインするから、とりあえず、これをはめておいてくれないかな」 「うん・・・うそっ、サイズピッタリ!?」 「実は・・・このあいだ、美穂がうたたねしていたとき、こっそりサイズ、計っておいたんだ」 「全然、気がつかなかった・・・ありがとう」 「これくらい大人しいものなら、CLOVERでつけていても文句は言われないと思う。結婚指輪、つけている人もいるからね」 「うん・・・ずっとつけてる。ありがとう、カズキくん」 「さて、と。お腹も空いてきたし、アパートに帰るか」 照れ隠しのように和希が言う。 「そうだね」 美穂は和希の腕に自分の腕を絡めつけ、ピッタリくっついて歩きだした。
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