《3章》 美しい顔にはウソがある!?

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そして、夢を見た。幸せな夢だった。  瞬一がいるのだ。瞬一が笑っているのだ。なあ梨夏、と話しかけてくる。ここはどこだろう。  ここは海の中。底に根づくように街があった。場所はきっと、東京だ。東京タワーが赤く燃えているのだ。不思議な夢だ。海の中だというに、まるで苦しくない。海の街を、梨夏と瞬一は歩いた。  突然、瞬一が梨夏の右手をつないだ。きゅるりと胸が弾んだが、平静を装ってそのまま散歩を続けた。いろんな町へと散歩をした。公園を歩いたり、東京タワーに行ったり、渋谷でお笑いライブをみたり。  公園では、瞬一がサッカーの腕前をみせてくれた。真剣なその横顔に、頬が熱くなるのを梨夏は感じた。耳の先まで熱くなる。  ねえ、瞬一。どうしてわたしを置いて天国へいってしまったの。梨夏は尋ねた。しかし、瞬一の顔が曇っていく。やがてうなだれて泣き出した。ごめん、瞬一。ごめんなさい。梨夏は必死に謝る。 だが、瞬一は最後に哀しく微笑むと、泡となり海へと消えた。 「シュンイチーーーー!!!!」  梨夏は叫んでいた。  わずかな時間のあと、夢を見ていたことに気づいた。ああ……夢かあ……と梨夏は目尻の涙をぬぐった。寝汗で背中がびっしょりと濡れていた。
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