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「はぁい、お待たせしました。ゆっくりしていってね」
女店員は真心が伝わるような笑みでアイスコーヒーとフレンチトーストを置いていった。
「うわっ!美味しそう」
梨夏はヨダレを我慢できなかった。
「これは確かに美味しそうだ。うん」
花染の目が輝いていた。先ほどまでの寝不足顔は雲散霧消していた。
よほど食欲がスパークしたのか、花染は一目散に食べ始めた。美味しくて声にならないらしい。うん、うん、とうなりながら食べていく。
「ハハッ。花染さんったら、落ち着いてくださいよー。もう」
梨夏はフォークを持ったまま笑った。
「キミも早く食べるんだ。これは、これは……すごいぞ」
「はいはい。いただきまーす」
フォークでひと口サイズに切り分けて、それを口に運んだ。ゆっくりと味わう。口の中で幸せが弾け出す。
「ふぬぬぬぬぬぬぬ」
梨夏は白目をむきながら食べる。咀嚼のたびにトーストの甘さとレモンのすっぱさが絶妙なバランスで鼻をぬける。
脳の底からじわじわと、そのままとろけそうになるほど美味しい。
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