《1章》 夏風に揺れる花染さんの袴

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聞き覚えのある凛々しい声。 ――あれ? 花染は到着していたのだろうか。 梨夏は振り返った。しかし。 「――え? だれ?」  梨夏はまばたきを繰り返し、その人物の頭からつま先までを眺めた。ただただ絶句した。 「おいおい、つれないな。僕に決まっているだろ」  その男は眼鏡をくいっとあげた。 「は、な、ぞ、め、さん?」 「そりゃあ、そーだよ。おかしなこというなよ」 「おかしいのはあなたです!!」  梨夏が驚いたのも無理はない。  花染が真っ白な和服姿をしていたのだ。 白い夏着物には、金色とピンク色の花びら模様が点々と咲き誇っている。 (はかま)は漆黒で、上下のコントラストは華やか――いや、ドドドド派手だった。 もしも古き文豪たちがパリコレに出場したら、こんな派手な和装になるのかもしれない。 ドツ、ドツ、ドツ、ドツ ダンスビートに合わせて、芥川龍之介がランウェイをウォークする。 決めポーズは両手を大きく広げて……『LA☆show☆moon!(羅生門)』 ――私は何を考えてんだ!! 梨夏はおかしな妄想を停止した。
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