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聞き覚えのある凛々しい声。
――あれ? 花染は到着していたのだろうか。
梨夏は振り返った。しかし。
「――え? だれ?」
梨夏はまばたきを繰り返し、その人物の頭からつま先までを眺めた。ただただ絶句した。
「おいおい、つれないな。僕に決まっているだろ」
その男は眼鏡をくいっとあげた。
「は、な、ぞ、め、さん?」
「そりゃあ、そーだよ。おかしなこというなよ」
「おかしいのはあなたです!!」
梨夏が驚いたのも無理はない。
花染が真っ白な和服姿をしていたのだ。
白い夏着物には、金色とピンク色の花びら模様が点々と咲き誇っている。
袴は漆黒で、上下のコントラストは華やか――いや、ドドドド派手だった。
もしも古き文豪たちがパリコレに出場したら、こんな派手な和装になるのかもしれない。
ドツ、ドツ、ドツ、ドツ
ダンスビートに合わせて、芥川龍之介がランウェイをウォークする。
決めポーズは両手を大きく広げて……『LA☆show☆moon!(羅生門)』
――私は何を考えてんだ!!
梨夏はおかしな妄想を停止した。
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