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番外編.もう少しだけ あと少しだけ
「ななせ、お帰りっ、今日は切り干し春巻きだよっ」
家に帰ると、つぼみがスキップする勢いで飛んできた。俺の周りをチョロチョロ回る。えらいえらい? ほめてほめて?
犬みたいだな、こいつ。
「うん。ありがと」
まとわりついてくるつぼみを撫でて軽くキスすると、つぼみは顔いっぱいに蕩けそうな笑みを浮かべて俺に抱き着いてきた。
「ななせ、大好き」
俺の服に顔をうずめてすりすり擦り付ける。ホント犬っぽい。ぶんぶん振ってる尻尾は見えないけれど、耳たぶまで赤く染まってるのが見える。
まあ。可愛いのでその耳たぶを食んで弄ぶと、
「ちょ、…っ」
つぼみが慌てたように俺の腕の中で身じろぐから、軽く頭を抱え込んでほの白い首筋に吸い付いた。
「何するの、ななせっ」
色白なつぼみの肌に明るい赤が映える。つぼみは涙目で睨んでくるけど、既に全身の力が抜けていて、誘っているとしか思えない。
「…母さん」
「え、…」
甘く潤んで全力で俺を受け入れるつぼみの唇を奥深くまで堪能してから、
「帰って来るから、お前の前に春巻き食べる」
すっかり力が抜けきって腰が立たなくなっているつぼみを抱え上げるとリビングに運んだ。
「な、…な、な、何言ってんの、ななせのバカバカっ」
遅まきながら意味を理解したらしいつぼみ犬が全然力の入っていない拳を丸めてポカポカじゃれつく。
「落ちるぞ、バカ」
可愛いのでもう一度キスしてからソファに降ろすと、
「…もうっ」
つぼみは爪の先まで赤く染めて、微かに腫れた唇を尖らせた。おねだりか、小悪魔犬め。
これ以上キスすると食べる順番が狂いそうなので、赤く染まった鼻の頭を食むに留めて洗面所に引き上げる。両手で鼻を押さえて身もだえしているつぼみの首筋にチラリと朱が滲んでいた。
マーキング。なんてらしくないことして。
…犬は俺の方。
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