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「小鷹ー見てよこの写真!俺この間クイズ番組で学ラン着たんだー」 「はいはい。後でみてあげるからLINEに写真送っといて」 「えーなんで今見てよ!移動中くらい一緒に話そうよ~席隣りなの久しぶりだし!最近小鷹冷たいしかまってくれないし!」 「・・・・あのさ疲れてる俺を寝かせる選択肢慧にはないわけ?」 「ないね」 だから話そう写真見てと王子様のキラキラスマイルが飛んでくる。 先ほどの顔面アップに比べると幾分かましだがこれはこれで心臓に悪い。 ちらちらを見える携帯に映し出された学ラン姿の慧は正直見たい。 ただ今見たら冷静な判断をできる気がしない。 ぐいぐいと近づいてくるのも嬉しいんだけど今の俺にとっては複雑で向かいの席に助けを求めるために視線を送ると視線に気づいた二人が意地の悪い笑みを慧に向ける。 「慧そんなにしつこいと小鷹に嫌われるぞ~」 同じメンバーの櫻井 立夏。 シルバーアッシュの短髪にするどい目つき。耳にはたくさんのピアスが開いていてアクセサリーブランドの広告塔でよく見かける。 がたいがよく男らしい雰囲気で慧とは違う路線で人気だ。 男性のファンも多くライブ会場では立夏をみて兄貴―と雄叫びを上げるファンや男泣きする人をたまに見かける。 「そうだよしつこい男は嫌われるよ?」 こちらは白井 理来。 ふんわりとした茶髪は地毛もともと色素が薄いらしい。 目はくりくりしていて全体的に見た目はトイプードルのような男だ。 特徴だけあげれば可愛いと思うが身長は178㎝と高身長で実は細マッチョだ。 暇をみつけては体作りをしていて運動風景をSNSにあげている。 普段は衣装で隠れていてわからないが本当の意味で脱ぐとすごいのを俺は知っている。 (別にのぞいたわけではなく温泉ロケでみただけ) 立夏と理来の2人はもともと幼馴染でとても仲がいい。 この2人がタッグを組んだ際に言い合いで勝てたためしはない。 「うるさいな幼馴染コンビは二人で仲良くしててよ。小鷹との貴重な時間が減る」 「そもそもロケバスだからみんないるんですけど。慧くんに俺たちみたいなやつは目に入らないって?」 「えーひどくない?ねえそう思わないリーダー」 「そこの3人うるさい。僕に話をふるな。寝ようとしてるのわかんないの?」 最後にこちらがわれ等がリーダー藍原 皐月。 ネイビーよりのブラックマッシュヘアはこれまたさらさらでどんなケアをしているのかいつも気になっている。 全体的に色素が薄く少年と青年の間を取った顔立ちをしいる塩顔男子。 メンバー内で一番最年少現役の大学生だ。 少年を演じろと言われれば少年のように無邪気に笑い社会人役では大学生とは思えぬ大人びた雰囲気で演技をし周りをざわつかせる。 最初は年齢的にも気を使われるかと思いきやけ口を開けば出てくるのは俺たちへの厳しい言葉ばかり。 年下だがとてもしっかりしていて本当にうちのグループのまとめ役だと思っている。 中学生のころから子役やモデル等いろいろ芸能活動をしていたようで歌、ダンス、演技どれもパーフェクトだ。 一番芸歴が長いからという理由でリーダーに抜擢されたと公には話しているけど。 「小鷹くん疲れてるみたいだし寝かせてあげなよ。休憩のときに慧は小鷹君と話すそれでいいでしょ?」 「・・・・皐月に言われたらしょうがない・・・我慢する」 こういう周りを見てるところとか締めるところ締めてくれるところやっぱりリーダーの素質あるなと思う。 「皐月くんありがとう。疲れてるのに騒いでごめんね?」 「別に小鷹くんは悪くないよ。慧はもちろんだけどそこの幼馴染2人も静かにね」 「「はーい」」 幼馴染2人はこれ以上怒らしたらまずいと思ったようで最近はまってるゲームの動画の続きを一緒に見るようだ。 皐月くんは本当に寝るみたいで持参のアイマスクで光を遮りついでにイヤホンをして寝る体制を取り始めた。 俺もこれで安眠できる。そう思ってリクライニングを倒そうとした瞬間隣から視線を感じた。 視線の先にはもちろん先ほど皐月くんに言いくるめられ拗ねている慧が子犬のような瞳でこちらを見てた。 その視線が可愛くてほだされそうになる。 ここで無視するのもなんだか可哀相になってしまい小声で話かける。 「何さっき皐月くんと約束したよね?これ以上話してたら怒られるよ」 「うーん。したんだけど小鷹1個だけお願いがあるんだけどうるさくしたら怒られそうだし耳貸して」 ね?って首傾げられたらだめなんて言えるはずもなく距離を置いていた体を近づけると慧の唇が俺の耳に近づいてくる。 (うわなんだこれめちゃくちゃ恥ずかしいってか無理今絶対俺顔赤い!!!!!) 早くお願いとやらを言って離れてくれと願っているとやっとその口が動きだした。 「小鷹が寝てる間手握っててもいいかな?」 だめに決まっていると言いたい。 言いたいけどこの距離がもう恥ずかしすぎて言葉を発するのさえ億劫になってしまい俺は観念して慧の左手を握りつつ体は通路側へできるだけ向ける。 「これで満足だろ?もうしゃべるなよしゃべったらこの手離すから」 これ以上しゃべるなと慧の手をキツく握ると返事をする代わりに軽く右手を握り返された。 ああまた右手が熱い。 そもそもこいつが悪いのだ。 こんなことしてくるからいけないんだ。 慧のことを意識し始めたのもこの過剰なスキンシップ、ボディタッチのせいだ。 ことある事に手を握ったり髪に触られたりダンスレッスン前の柔軟ではふざけて擽られる事もたくさんあった。 最初のうちは気にしなかったけど回数が回数なだけに何度か文句を言ったけどはぐらかされて終わってしまった。 言っても無駄なら我慢しよう、何年かすればこの行為にも慣れるだろうと思っていたけど実際はその逆で別の感情が生まれはじめる。 慧に触れられればその箇所が熱を持ちドキドキしてしまう。 いつも近くに居るはずなのに隣にいない時気づけば慧がどこにいるのか探してしまう自分がいることに気づいて本格的にマズいと思い始めた。 同じグループのメンバーで一緒に居すぎて何か勘違いしてるんじゃないかと自分の気持ちを否定し続けた。 男同士なんて気の迷いそう心を落ち着かせて過ごしていた。 この気持ちを自覚してしまったのはグループ3周年ツアーコンサートでのことだった。 アンコール曲で慧が目の前からやって来た。 手を挙げてたのでハイタッチかなと思って挙げたその手を慧が握りしめ俺の体ごと引き寄せた。 何をするんだと文句を言おうとしたけどその言葉は発せずに終わった。 俺たちの周りの女の子たちの悲鳴が遠くで聞こえた。 その時頭は真っ白でどうしたらいいのか分からずただ近くにある黄色い綺麗な瞳を見つめ返す事しかできなかった。 俺だけが映し出されたその瞳をみた瞬間この気持ちの終着点が分かってしまった。 触れていた唇が離れていく。 その時の俺はステージ上にいることを忘れ自分のパートを歌う事も忘れてしまった。 それくらい動揺していた。 女の子たちの悲鳴を聞き付けてやってきた立夏に叩かれてやっと現実世界に戻ってきた。 はっとして見上げた慧はいつもの王子様の笑顔ではなく少年のような笑顔を浮かべていてその表情をみたらもうこの気持ちは止まらなかった。 (俺慧のことが好きだ・・・・・・) その後は何とか持ち直し最後の挨拶をしてステージ裏へとはけて行く。 慧は幼なじみ2人に連行され先に進んで行く。 1度こちらを振り返ったように見えたが目を合わせるのが恥ずかしくて見てみる振りをしてしまった。 (さっきの慧本当にかっこよかった。どうしようキスしたんだ俺たち) しかも今日はツアー最終日でカメラも入っている。 あれが映像化するなんて思ったら恥ずかしくてしょうがないどうしよう。 気まずさにその場で蹲っていた時目の前に青のスニーカーが見える。 この靴は・・・ 「小鷹くん大丈夫?」 「大丈夫大丈夫!なんか終わったんだって思ったら安心しちゃって休憩しちゃった」 「ふーんそっか。僕は慧のキスが原因だと思ってたけど違うんだね」 この一言でさっきまでのほわほわしていた気持ちが一気に急降下し変な汗が噴き出してきた。 顔をあげれば鋭い目をした皐月が自分を見下ろしていた。 「小鷹くん覚えてるよね?うちのグループのルール」 「もちろん覚えてるし俺には関係ないよ?慧のキスに動揺したのは確かだけど不意打ちだったから吃驚しただけ。さっこの話は終わり俺達も早く楽屋戻ろ」 これ以上皐月くんの目を見る事が出来なくて早足で楽屋へ向かう。 ----メンバー内恋愛禁止 馬鹿げたルールが結成から3年後俺にとって足枷になるなんて思ってもいなかった。
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