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貴女の涙をちょうだい
藤沢 歩の家の近くの森には妖精がいるといわれている。
「歩、今日も小学校は楽しかった?」
歩の母親の彩香が小学校から帰ってきた歩に尋ねる。
「うん、今日は運動会の練習をしたんだ。2年生は『かけっこ』だから、たくさん走ったよ。」
「そうなの、頑張ったね。」
「お母さんはお体、大丈夫?運動会、見に来れる?」
歩はベッドに寝たきりの彩香に抱きつく。
「歩、ゴメンね。お母さん、お医者さんにあんまり動いちゃダメって言われてるから行けそうにないの。代わりにおばあちゃんが行ってくれるから、頑張ってね。」
彩香は歩の頭に手を置いて、前髪をかき分けるように額をなでる。歩は悲しそうな声で「分かった。」と答えて、彩香のベッドがある部屋をゆっくりと後にした。部屋から出てきた歩におばあちゃんが声をかける。
「歩、お母さんは体が弱っとるから、許してあげてな。今日は遊びには行くんか?」
「うん、今日は大智くんの家の近くで皆と遊んでくる。」
「そうか。遅くならんようにな。」
そう言って、おばあちゃんは歩に水筒と帽子を持たせて見送った。
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