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「どうして?」
歩は不思議に思って、フローラの顔を見る。フローラは笑顔で歩の問いに答える。
「これには私の涙を溜めておいたの。6年前に彼女に涙の大事さを教わってから、彼女に恩返しがしたくって、次会った時に渡せるように落ちていた小瓶に入れておいたの。」
小瓶には限界まで涙が溜められていた。
「どうして、それをくれるの?」
歩は先ほどまで泣いていたことより、フローラの行動に対する疑問の方が大きくなっていた。
「彼女もきっとそれを望んでいるわ。それに歩くんはもう私にとっても大事な人だもの。涙をあげるのには十分な理由だわ。」
笑っていたフローラは今度は申し訳なさそうに言う。
「本当はもっと早くにあげれば良かったのだけれど、どうしても歩くんとの時間を終わらせたくなくて。意地悪をしちゃった、ごめんなさい。」
フローラは歩に対して頭を下げた。
「ううん、ありがとう、フローラさん。」
歩は首を振ってフローラにお礼を言った。
「歩くんは優しいね。ほら、それを持ってお家に帰りなさい。運動会は明日なんでしょ?」
フローラは歩に小瓶を持つよう促す。
「うん、ありがとう。早くお母さんにあげなくっちゃ。」
受け取った歩はしっかりと小瓶を握りしめ、フローラに「またね。」と言い、その森を後にした。フローラは「またね。」と返事をしてから、歩の姿が見えなくなるまで笑顔で手を振っていた。
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