貴女の涙をちょうだい

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 (あゆむ)が見えなくなった後、フローラはまた大きな石の上に腰掛けた。  「あーあ、あげちゃった。これでもう一度彼女、彩香(あやか)に会えた時に恩返し出来るものがなくなっちゃったなー。」  フローラは残念そうにそう言うが、表情は笑顔のままだった。  「ちょうどいい小瓶なんて見つからないし、そもそも人間一人分の涙なんてもう二度と溜まりそうにないわね。私の涙で歩くんのお母さんが元気になればいいけど。もう何年も前のものだし、どうして妖精の涙が人間に効くのかも私には分からないし、考えるだけ無駄ね。」  フローラは立ち上がる。  「それにしても、早く別の場所に移動しなきゃね。妖精がこの森にいるってことが分かれば、どんな人間がやってくるか分からない。彩香を待ち続けて6年も経っちゃったけど、とうとうこの森ともお別れか。歩くんには最後まで嘘をついちゃうことになるけど……」  フローラは生きていく上で必要な道具をまとめて、その森を後にする。  「歩くん、元気でね。」  フローラの目から一粒の涙が流れ落ちた。
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