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実感
帰り道。
当たり前になった君の隣。
今日はなんだか落ち着かない。
「なあ…」
これから君に何を話そうかなんて決めていなかったけれど、だいたい僕から声を掛けて話が始まる。でも、今日はその内容というものが出てこなかった。だから、それ以上は何も言わなかった。
「ねぇ…」
数分歩いた頃、君から声が掛かる。
僕は黙って、僕よりも身長の低い隣にいる君に目をやる。
「……」
「……」
何も話し出そうとしない君に、文句を言うか迷ったけれど、先ほど僕も同じことをしたので、言える訳もなく、何も言わずにただ歩いた。
「……」
「……」
黙ったまま、君はわざとらしく、ゆっくり歩き始めている。そんな君を不思議に思ったけれど、まだ僕は何も言わないようにした。
それなのに、君は気恥ずかしくなることを言葉にした。
「会話のタネがない。でもさ、こう言う日も偶にはいい」
「そうだな」
「布団が吹っ飛んだ、なんつって…」
「……」
「おぉ、傷つきます」
これは夕暮れの中。
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