鈍感

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鈍感

 「なあ、休日は何やってたんだ?」 やっと今週が始まった。 朝起きて制服に着替えて、歯磨きをして、朝食を食べて、家を出るまでもが長く感じた。 やっとの思いで迎える登校時間。 やっぱり君と学校へ向かう。 約束もしてないし、将又、僕が君と出くわす為に、計画を立てているわけでもない。ただ、毎回会うだけ。 「んーと、男の子を家に連れ込もうとしてだんだけど、全然来てもらえなかったから、ずっと泣いてたかな」 機嫌も良くなければ悪くもなさそうないつもの君は、僕に何か文句でもあるようだ。 「いや、普通は行かないだろ」 「んー、少しくらい私に興味持っても良いのに」 「いや、興味は十分にあるよ」 「本当に?ならなんで誰も私の家に来ようとしないのかな?」 「はぁ?異性の家に行くなんてだいたいやましいことしか起こらないからだろ?」 君は鈍感なのか、純粋なのかわからない。 ただ、今日も僕に見せる隈は健在だ。 「わからないよ、男どもの気持ちが。一人くらい来てくれたって良いのに」 「一人くらい?」 一体それはどう言う意味だろう。そう考え始めた頃には、僕の頭で何か嫌なことを予想した。 「うん、何人か誘ったんだよ…でも誰も来てくれなかった」 「お前、やめとけ?」 呆れたように君に言うと、首を傾げて珍しく僕を見てくる。 「なんで?」 「いや、その…なんか色々と」 言葉が詰まる。この気持ちはなんだろう。 僕だけに対して家に誘うと言うならまだしも、他のクラスメイトや他人に声を掛けているとなると、なんだかどうしても理解し難い。 もう一度、君の顔を見ると、君は不気味に笑っている。 「嘘だよ、私は君にしか声は掛けてない」 「あっそう…なら別に良いけど」 安堵。 君からの言葉と同時に、重く考えすぎた頭の中が空になる。だから、道に転がっていた石を蹴り飛ばす。石ころは歪な形をしているのだから真っ直ぐには転がらず、道の端にある草むらへと入っていった。 「君はもう少し私のこと、知らないとだね」 「何が言いたいの?」 君はまた、僕に変なことを言ってまた歩き始めた。その表情は相変わらずつまらなそうだ。
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