涙の行方

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気の毒そうな顔で回りが見守る中 ファイルをもって自分の席に戻る。 気分は最悪。 「じゃあ、皆さぁーん、私はフレックスなので、かえりまぁーす。」 鼻唄でも歌い始めそうな勢いでS子が立ち上がり、 いそいそと荷物をまとめる。 今日も素敵な赤のドレスワンピ。 10センチのヒョウ柄のヒール。 「ネイル、ネイル♪」 ネイルサロンに行くらしい。 (はてさて、この会社、将来大丈夫か。 ま、残業代も出ないし辞めて正解かな。) そんなことを考えていると。 「お疲れ様でし、、、。キャーーーーッ」 ────バターン! すごい音がした方を見ると。 壁にかかっていた1メートルの鬼のお面が、 S子の上に落ちてきていた。 「あーん、もーう、いったーい、死ぬぅ死ぬぅ。」 S子がみるみるうちにポロポロと涙をながし始めた。 すごい音に支店長も部屋から出て来て、 とにかくフロア中の視線を独り占めしている。 「あーん、あーん。」
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