5月末 小さな嫉妬ともう一人のいたずらっ子

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「大丈夫?」 横からの副社長の声にびっくりして慌ててスマホを閉じた。 「え、あ、はい…」 私がほぼ棒読みの返事をすると、副社長からは明るい返事が返ってきた。 「よかった。もう着くから」 信号待ちの、赤信号の向こうにそびえ立つ高層ビルが目に入る。 …グランド…キャッスル…ホテル…… 理子とホテルビュッフェを巡ることもあるが、グランドキャッスルだけは予算的に手が出せないでいる。 その時、手にしたままのスマホが振動する。 ◆【今どこ?】 …理子、今、私は、それどころじゃない。 ◆一花【ごめん、今日の飲みは無理。…グランドキャッスルに…足を踏み入れてしまうかも(;゚Д゚)。また話す】 私はスマホをバッグにしまった。 数分後、車は地下に潜った。 「着いたよ」 副社長は滑らかに車を停めると、エンジンを切った。
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