5月末 小さな嫉妬ともう一人のいたずらっ子

64/71
7434人が本棚に入れています
本棚に追加
/1587ページ
「…さっきから聞いてりゃ、っとにガキだな」 それまで黙っていた副社長が声をあげた。 「確かに、明日は彼女とその件で学校に行く予定だったよ。正直、俺はどうでもよかったが、彼女の頼みじゃ断れない。俺は最初から行くつもりだった。だから…」 すると、副社長は私の隣にやってきて、一度離した腕を強引に握った。 「彼女がここにいる理由はのためなんかじゃないんだよ」 そして、次の瞬間、私の身体を引き寄せ、私の耳元でささやいた。 「行こう、一花」 私の耳に触れる副社長の唇。 その距離とは裏腹に、声は思いのほか大きく、オミオミまでは十分届いた。 「あ…あの、副社長。今日はその…晴臣くんがここに来てしまった以上…こんな夜中に彼を放っておけません…」 私は、私の腕を掴む副社長の手にもう一方の手を乗せた。 「今はプライベートだろ? 君がそこまでする必要はない」 …実のところ…私もそう思います。 でも…… 「私は…“ベビーシッター”ですから。“子供”はいつも予想外の行動を起こすものです」 …特に…この問題児は。
/1587ページ

最初のコメントを投稿しよう!