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再び気が付いたのは、
真っ暗で重苦しい場所であった。
指ひとつ動かせないところを見ると、
どうやら埋められたようだ。
結局、実行犯は簡単に組織に消された。
青い稲光は、
シャワー中に電気を流されたのだろう。
おそらく仲間も近い所に埋まっているはずだ。
思い起こせば、人生ロクなもんじゃなかった。
借金を作って逃げた父も、
俺を捨てて他の男と出ていった母も、
仲間面してくる施設の連中も、皆嫌いだった。
自分の居場所は組織しかなかったのだ。
いや、本当は知っていた。ただ怖かったのだ。
やさしく差し伸べられた手が、
容易く裏切るのではないか、
またその手を振り離されるのではないか、
金以外の何も信用できなかった。
だから、自らその手を振り払ってきた。
結局のところ、
自分はまっとうに生きられなかった、
ただそれだけのことだった。
すでに無い眼窩には雨水が溜まり、
どこか物憂げに泣いているようにもみえた。
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