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5
爆発後。虚空に残ったのは、血煙とは違うものだった。
夜よりも黒い、黒檀色の靄が漂っている。
エイシスは木陰からその黒靄を面妖な気分で眺めていた。
そこへ、乳白色の光がそれを撃ち抜いた。
「やりました。当たりましたーっ!」
アルトが嬉しそうに叫んだ。
エイシスは、木陰から顔を出してすぐ、目を瞠った。
黒檀色だった物が、錆びを溶かすように青白い靄へと輝きはじめた。
団塊は次々とほつれていき、蛍火となって天に昇っていく。
その中にエイシスは、見覚えのある女性の背中を見た気がした。
いい知れない寂しさに背中を押され、木陰から飛び出していた。その後ろ姿を懸命に追いかける。
「サナ、サナぁっ! 俺、強くなるよ。サナに安心してもらえる立派な領主になるからあ!」
女性が振り返ることはなかったが、肩口で小さく手を振っていた。
こうして、彼らは音もなく──、
星天へと消えた。
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