1/1
前へ
/50ページ
次へ

 爆発後。虚空に残ったのは、血煙とは違うものだった。  夜よりも黒い、黒檀(こくたん)色の(もや)が漂っている。  エイシスは木陰からその黒靄を面妖な気分で眺めていた。  そこへ、乳白色の光がそれを撃ち抜いた。 「やりました。当たりましたーっ!」  アルトが嬉しそうに叫んだ。  エイシスは、木陰から顔を出してすぐ、目を(みは)った。  黒檀色だった物が、錆びを溶かすように青白い靄へと輝きはじめた。  団塊は次々とほつれていき、蛍火となって天に昇っていく。  その中にエイシスは、見覚えのある女性の背中を見た気がした。  いい知れない寂しさに背中を押され、木陰から飛び出していた。その後ろ姿を懸命に追いかける。 「サナ、サナぁっ! 俺、強くなるよ。サナに安心してもらえる立派な領主になるからあ!」  女性が振り返ることはなかったが、肩口で小さく手を振っていた。  こうして、彼らは音もなく──、  星天(そら)へと消えた。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加